放射線教育の重要性が議論 原災回復セミナー

福島原発事故による長期影響地域の生活回復のためのダイアログセミナーが10日、11日、伊達市で行われ、国際放射線防護委員会(ICRP)のジャック・ロシャール氏、OECD/NEAのテッド・ラゾ氏が参加したほか、教育関係者やメディア、NPO等、多数の参加のもと、被災地における被ばく影響に対する不安を巡り、放射線教育の重要性などが議論された。

佐々木清・明健中学教諭と高畠勇二・開進第一中校長は、郡山市内の放射線教育の実践について発表した。放射線教育から復興教育へ繋げ、今後の放射線授業では、エネルギー環境教育の視点で有効利用を考え、放射線に関する基本的な性質を理解することにつなげたいと語った。

また、遠藤真理子・川俣小学校長は、児童1人1人が放射線について学び、理解を深めることにより、自ら考え判断する力を育成することを目的として、紙芝居や模型などを使って教育を行っていると報告した。

廣瀬要人・飯舘村教育長は、放射線教育のねらいについて、(1)子供たちに放射線を正しく理解させ、放射線から身を守る(生き抜く力を持つ)こと(2)放射線教育を通じて、いじめや風評被害を排除すること――であるとし、国民的な学習も必要だとした。

これら日本の学校教育における問題について、東京医療保健大学の伴信彦氏は、放射線教育は科学よりも社会政策として扱われていることなどを挙げ、被災地の当事者によって作られた教育モデルが必要だとした。

英国の大学で環境科学を教えるテリー・シュナイダー氏は、ノルウェーのデボラ・オウグトン氏とベラルーシ緊急事態省のオレグ・ソボレフ氏の代理として講演し、ノルウェーの状況について、教育カリキュラムを変えずに地域住民の中で進めているが、チェルノブイリ事故からまるで50年以上経ったかのように忘れられつつあると報告した。また、ベラルーシの放射線防護文化教育について、マッシュルームやベリーが未だ汚染されている状況で、子どもたちから汚染された理由についての質問があるとし、世界で事故の状況を風化させないような取組が大切だと語った。

一方、福島のエートス代表である安東量子氏は、ノルウェーとベラルーシを視察した経験から、顔の見える関係で問題に取り組むことが大切であり、日本では組織やシステムを描くばかりで人間同士が話し合おうという姿勢がないのではないかと指摘した。


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