供給チェーン整備で行動計画 英国政府と産業界が共同策定英国政府は6日、原子力発電が今後、同国のエネルギー供給保証および経済成長の牽引に一層大きな役割を担うとの認識から、国内の原子力供給チェーンの国際的な競争力を高めると共に供給準備を整えるための30項目とその実施主体、および実施時期を記した「行動計画」を発表した。英原子力産業協会(NIA)との連携により10月末に創設した「原子力産業協議会(NIC)」を中心に同行動計画を実行に移し、国内の原子炉新設計画の準備体制を改善するだけでなく、原子力輸出を見据えた戦略の構築を目指すなど、同国の原子力産業は本格的な再生に向けて動き出す。 「原子力供給チェーン行動計画」は政府が原子力産業界と協力して策定。その発表は担当省であるエネルギー気候変動省(DECC)とビジネス・イノベーション技能省(BIS)の大臣が行った。政府としては、国内原子力産業界の主要企業が機器製造から建設、サービス、技術、人材育成に到るまで、大規模かつ多様な供給チェーンで民生用原子力市場の中核を形成し、世界レベルのリーダーとなる構想を描いており、これが実現すれば、英国の原子力供給チェーンは国内外の原子力市場を問わず、主要な原子力開発企業やメーカーおよび事業者にこれらを供給する最も重要な立場を得ることになる。このため、行動計画における主な項目としては次のものを挙げている。 (1)NICの第1回会合を来年第1四半期にも開催(2)原子炉の新設準備を改善するための共同行動や課題を特定するため、主要企業の補助部門で作業部会を設置する(3)中小企業が原子力供給チェーンの大型入札に参加可能となるよう、「先進原子力機器製造研究センター(NAMRC)」の助言を採り入れる(4)関連技術産業から技術者を引き込んだり、既存の技術者を配置転換するなど、新たな人材を呼び込んで重要技術者の不足問題に取り組む(5)市場の優先事項と調整した原子力輸出戦略を策定し、英国の原子力産業界が輸出の機会や知識を得られるようキャンペーンを実施する。 なお同じ日、政府は原子力デコミッショニング機構(NDA)が管理するセラフィールド原子力サイトで新たに500名の技術者を募集するキャンペーンを開始した。供給チェーンの再構築を図ると同時に、原子炉の運転・保守スタッフやエンジニア、プロジェクト管理者、および事務管理業務を担う人材を育成するのが目的で、実習生や学部卒業生、訓練生のみならず元軍人なども対象にする方針だ。 2007年に当時のブレア政権がエネルギー政策を転換して以来、英国では既存原子炉をリプレースするため、さし当たり2025年までに5サイトで1600万kWの原子炉新設に向けて着々と準備を重ねている。新規原子炉の発注が途絶えた1990年代以降、同国では大型機器の製造能力を含めた技術力や優秀な技術者の供給チェーンが弱体化しており、政府は09年、既存の先進機器製造センター(AMRC)に原子力関係の機能を加えたNAMRCを1500万ポンドの投資で設置することを決定した。 ロールス・ロイス社を中核とする国内原子力供給チェーン企業約30社の連合とシェフィールドの大学で構成され、今年5月に正式に発足。セラフィールドの原子力研究所の機能補完という位置付けとなるほか、原子力機器の製造・組立プロセスや人材育成開発プログラム、管理手続きなどを共同で開発することになっている。 お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |