的確な情報提示重要 三菱総研 意見の背後の考え方分析

三菱総合研究所はこのほど、「原子力発電のあり方に関する国民の多様な認識」を公表した。一般市民約3000人を対象として2012年7月に行ったウェブアンケートの回答を分析した。「どの意見が多かったか」に加え「なぜそのような意見になったのか」の推定を試み、環境面やエネルギー安全保障、さらに原子力発電廃止による生活への影響など、関連するさまざまな設問も用意した。

将来の日本の原子力発電に対しては、「今すぐ、または30年までにゼロ」と「将来的にはゼロ」を合わせ約6割以上が原子力発電の廃止を求める結果となった。この中で、「原子力発電を利用しなくても生活に問題は起こらない」と考えている人たちの多くは「原子力発電廃止論」を支持する傾向が認められ、反対に「生活に問題が起こる」と考える回答者は、その半数以上が「原子力発電存続論」を支持している。

これらの回答から、原子力発電のあり方の議論で考慮すべき前提として(1)再生可能エネルギーの可能性(誰がどこにどれだけ導入できるのか)(2)省エネの余地(具体的に、何を省エネするとどのくらいの効果があるのか)(3)再エネ、省エネのコスト負担はどの程度なのか(結果として電気料金はどうなるのか)(4)原子力発電の安全性やリスクに関する情報、および、それらがどの程度開示され理解されているか――を挙げ、これらをどのように捉えるか次第で原子力発電に対する考え方も大きく左右されるとした。

同研究所は、原子力発電に対する国民的議論では、賛成・反対の意見の背後にある考え方の把握・分析が重要だとし、国民が重視する視点への的確な情報提示と正しい理解の浸透が、今後の議論に有用であると強調している。また国民の認識に加え、産業・経済、環境、安全保障も含めた総合的・長期的な指針に期待するとまとめている。


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