〈新規プロジェクトを取り巻く状況〉


英国の電力事情

英国の2011年の総発電電力量(揚水発電を除く)は3648億9700万kWhで前年比3.6%減。英国における天然ガス価格の高騰を受け、ガス火力の発電量は2010年の1756億5500万kWhから1468億1400万kWhに大幅に下落。総発電電力量に占めるシェアは46%から40%に下落した。一方、石炭火力はガス火力の代替として活躍し、1085億8300万kWh(2010年=1076億9400万kWh)と微増。シェアも28%から30%に上昇した。

再生可能エネルギー(水力発電を含む)は、風力発電設備の増強だけでなく風況や降水量の影響で、シェアが2010年の6.8%から2011年には9.4%を記録した。

原子力発電は2010年に点検を終えたプラントが復帰した影響で、原子力発電電力量は689億8000万kWh(2010年=621億4000万kWh)と前年比11%増。2011年の原子力シェアは18.9%だった。

一方、2011年の電力輸出量24億6700万kWhに対し電力輸入量は86億8900万kWhであり、約62億2200万kWhの輸入超過で、英国の電力需要の1.7%をまかなっている。もちろん輸入元は、原子力大国フランスである。かつて話題となっていた北海油田・ガス田はすでに過去のものであり、英国は電力の純輸入国である。

英国内原子力の現状

2012年末現在、英国で運転中の原子力発電所は計16基。点検あけのプラントが復帰したことで2011年の稼働率は66.4%と前年より7.1ポイント増加したものの、過去最高だった1998年の80.1%に比べると14ポイント近く下回っている。

1998年には原子力発電のパイオニアとして35基・1417万3000kWの原子力発電所を擁し、原子力発電電力量は995億kWh、原子力シェアは27.4%を誇る原子力発電大国だった。しかし、その大半が出力の小さなガス冷却炉であり、軽水炉は1995年に運開したサイズウェルB(PWR、125万kW)の1基のみである。

ガス冷却炉の中でもマグノックス炉と呼ばれるGCRは、原子力開発初期段階の1950〜1960年代に開発された炭酸ガス冷却型炉で、1960年代から1970年代に建設された。いずれも出力は6万〜50万kW級と小さい。

英国が世界に先駆けて実用化に成功したマグノックス炉だったが、運転コストが売電価格を上回るケースも多く、老朽化も進んでいることから、英国ではマグノックス炉は「原子力債務」に分類されている。マグノックス炉を所有・運転していた英原子燃料会社(BNFL)は2000年5月、全マグノックス炉(計20基=当時)の閉鎖計画を発表し、現在も運転を続けているGCRはウィルファ1号機だけである。なお同機は2014年に閉鎖される予定だ。1998年に閉鎖された東海発電所(16万6000kW)が同じGCRである。

残る運転中の14基は、AGRと呼ばれる改良型ガス冷却炉で、出力は60万kW台。すべてEDFエナジー社が所有している。改良型とはいえいずれも1970年〜1980年代に運転を開始しており、2016〜2023年にかけて閉鎖される計画だ。ただしEDFエナジー社は、全てのAGRで平均7年間の運転期間延長を計画している。国内唯一のPWRであるサイズウェルBについても、20年の運転期間延長方針を表明している。

英国では運転期間に法的規定がなく、原子力規制庁(ONR)が10年毎に実施する定期安全審査(PSR)で経年劣化の評価を行っている。現時点で言えば、火力プラント等も含めた英国全体で見ると、2020年前後に国内既存発電設備の5分の1が閉鎖されることになっている。その一方で、輸送部門や暖房の電化により電力需要は2050年までに倍増する見込みである。

また英国は2008年11月、CO排出量を規制する世界初の国内法となる気候変動法を制定。温室効果ガス排出量を2050年までに1990年比で80%削減することを義務付けた。特に電力部門については2020年までに40%削減を義務付けており、気候変動委員会(CCC=温室効果ガスの効率的な排出削減について予算配分や実施目標などを政府に勧告する独立機関)は2009年10月、同目標の最終的な達成のためには、年率2〜3%で排出量を削減する必要があるとし、2020年までに、(1)計2300万kWの風力発電設備(約8000基)の運開(2)CO回収・貯留(CCS)実証設備の運開(3)最大2基の原子力発電所の運開――が必要との見解を示した。特に原子力発電所については、2022年までにさらに1基を運開し、少なくとも新規に計3基が必要と強調している。


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