ブルガリア ベレネ計画の是非で国民投票 法的な有効投票率に届かず

ブルガリアでベレネ原子力発電所完成計画の是非を問う国民投票が27日に行われた。投票率は20.22%と法的な拘束力が得られる6割には遠く及ばなかったものの、投票した国民の60.6%が同計画に「賛成」と回答していることから、現政権が昨年、打ち切りを表明した同計画を再び議会審議の俎上に載せることは可能だ。ただし、エネルギー相は「80万人の国民、全人口の12%足らずが政府の打ち切り決定に反対しているに過ぎない」と強調しており、前政権がロシアとの協力で進めていた同計画の実現は難しくなった模様。その一方、現政権は既存のコズロドイ原発に、米国籍企業との協力で7号機を増設するという自らの案には意欲的で、今年の後半にも環境影響声明書など、政府決定に必要な書類を準備すると明言している。

ブルガリアは欧州連合への加盟と引き替えに閉鎖した古い原子炉の容量を代替するため、北部のベレネで100万kW級の原子炉2基を2014年までに完成させることとし、2008年に前政権がロシアと建設契約を締結した。しかし、資金調達がネックとなって、49%の出資を約束していた独RWE社が撤退。09年に発足した中道右派政権のB.ボリソフ首相は昨年3月、「コストがかかり過ぎるため実現は不可能だ」として計画の打ち切りを決定していた。

これに異を唱え、国民投票実施のための請願活動に乗り出したのが最大野党で前政権のブルガリア社会党。必要数を上回る署名の収集に成功したが、ブルガリアでは伝統的に、雇用機会の創出効果などの点から原子力に対する世論が好意的。このため、今回の国民投票では改めて意志表明する関心が薄かった、もしくはベレネ原発の経済性に関する与野党の政治的議論の中で、自らの判断を下す意欲が失われたことなどが投票率の低さに表れたと見る向きもある。

また、投票に際して組織委は当初、「ベレネでの原子炉建設」について明確に是非を問う設問を準備していたが、政権与党が「ベレネで」という文言を強行削除。政府決定に対する責任追及を逃れるため一般的な原子炉新設に対する設問に差し替えたことも、国民の混乱を招いたと言われている。

国営通信(BTA)によると、組織委が29日に公表した最終投票率は20.22%。関連法によると、前回総選挙での投票数から導き出した有効投票率である約6割に達していないため、法的には無効となるが、投票率が20%以上で、なおかつ賛成票が過半数を超えていることから、この議題は議会で再審議することが出来る。

しかし、経済・エネルギー・観光省のD.ドブレフ大臣は同省のウェブサイト上で「議会が審議したとしても政府の判断を再確認することになるだけだ」と指摘。前政権の計画にはあくまで反対する立場を表明した。

原子力継続には意欲的

現政権としてはベレネ計画用の機器を流用し、新たな原子炉をインフラの整ったコズロドイ発電所に1基増設する案を提示しており、昨年8月にはコズロドイ7号機のハイブリッド化構想に関する実行可能性調査をウェスチングハウス(WH)社に発注。ベレネ用に購入済みのロシア型PWR機器を、WH社製の計装制御(I&C)系や燃料、および親会社である東芝製のタービン発電機と組み合わせて建設する可能性を探っている。

ドブレフ・エネルギー相も記者会見で、地質調査報告など環境影響評価の事前調査や社会経済分析について議論中だと回答。7号機のサイトや建設に関する認可判断のための準備が進められていることを明らかにした。


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