[解説] 新安全基準骨子案 原子力規制委員会 7月施行に向けパブコメ
原子力規制委員会は6日、「発電所軽水型原子炉施設に係る新安全基準骨子案」を取りまとめた。骨子案は、(1)設計基準(2)シビアアクシデント対策(3)地震・津波の3つに大別され、28日までパブリックコメントを行っているが、今号では、そのポイント、要求事項の一例を紹介する。
〈設計基準の強化〉
【「炉心損傷に至らない状態を想定した設計上の基準」を見直し】
(1)考慮すべき自然事象として、竜巻・森林火災等を追加
敷地の自然環境を基に、洪水、風(台風)、竜巻、凍結、降水、積雪、落雷、地滑り、火山の影響、生物学的事象(昆虫の大群など)、森林火災等。
(2)火災防護対策の強化・徹底
米国等の仕様規定を参考に別途評価ガイドを策定。
(3)安全上特に重要な機器の信頼性強化
重要度の特に高い安全機能を有する系統については、機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合にも安全機能が達成できる設計であること。重要度分類指針も別途見直し。
(4)外部電源の強化
複数の回線で異なる変電所等に接続。複数の原子炉が設置される発電所では、いかなる2回線が喪失しても、それら原子炉が同時に外部電源喪失とならない設計であること。
(5)熱を逃がす系統の物理的防護
基準津波、溢水、飛来物およびその他の人為的事象に対して物理的防護を施した設計とする。
〈シビアアクシデント対策〉
【設計上の想定を超える事態の発生を前提とした炉心損傷に至らせないための対策を新規に要求】
(1)通常操作による原子炉停止に失敗した場合の対策
運転時の異常な過渡変化時のスクラム失敗事象の兆候がある場合、または発生した場合、炉心の著しい損傷を防止するため、原子炉冷却材圧力バウンダリおよび格納容器の健全性を維持しつつ、原子炉を臨界未満にする設備、手順等を整備する。
(2)原子炉冷却機能喪失時(原子炉高圧時)の対策
全交流電源・直流電源喪失を想定し、現場での可搬式設備を用いた弁の操作により原子炉隔離時冷却系または非常用復水器(BWR)、タービン動補助給水ポンプ(PWR)の起動および十分な期間の運転継続を行う手段を整備する。
(3)原子炉減圧機能喪失時の対策
直流電源喪失時においても、減圧用の弁を作動させ原子炉冷却材圧力バウンダリの減圧操作が行えるよう、手動設備または可搬式代替直流電源設備を配備する。
(4)原子炉冷却機能喪失時(原子炉低圧時)の対策
炉心の著しい損傷を防止し、格納容器の破損を防止するため、当該機能を復旧、代替する等、原子炉を冷却する設備、手順等を整備する。
(5)最終ヒートシンク喪失時の対策
BWRにおいては、サプレッションプールへの熱の蓄積により、原子炉冷却機能が確保できる一定の期間内に、十分な余裕を持って所内車載代替UHSS(熱を逃がし輸送する系統)のつなぎ込み、PWRにおいては、タービン動補助給水ポンプおよび主蒸気逃がし弁による2次系からの除熱により、最終的な熱の逃がし場への輸送ができること。
(6)サポート機能の確保
全交流電源喪失時に備えた、代替電源整備等(電源車、バッテリ等)の配備。
【炉心損傷の発生を前提とし、格納容器の破損を防止するための対策を要求】
(1)格納容器の冷却・減圧・放射性物質低減対策
可搬式格納容器スプレイ注水設備を配備し、駆動源等の多様化、各設備の位置分散を図る。
(2)格納容器の除熱・減圧対策
格納容器内圧力および温度の低下を図り、放射性物質を低減しつつ排気するフィルタ・ベントを設置。
(3)格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却対策
溶融炉心により格納容器が破損することを防止するため、格納容器下部注水設備(ポンプ車、ホースなど)を配備。
(4)格納容器内の水素爆発防止対策
水素ガスを格納容器外に排出する場合には、ラインに防爆設備、放射性物質の低減設備、水素および放射性物質濃度測定装置を設ける。
(5)原子炉建屋等の水素爆発防止対策
水素濃度制御設備または防爆機能・放射性物質低減機能付の水素排出設備を設置する。
(6)使用済み燃料貯蔵プールの冷却対策
可搬式代替注水設備を配備し、設計基準対応の冷却、注水設備が機能喪失し、小規模な漏えいがあってもプール水位を維持できること。大規模なプール水漏えい等により、水位維持ができない場合、燃料損傷を緩和し、臨界を防止する設備、手順等を整備すること。
【意図的な航空機衝突などのテロリズムにより炉心損傷が発生した場合に使用できる施設「特定安全施設」の整備を要求】
(1)原子炉建屋と特定安全施設が同時に破損することを防ぐために必要な隔離距離(例えば100m以上)を確保。
(2)特定安全施設に属する設備については、免震、制震構造を有し、水密性が保証された建屋または高台に建屋等に収納する。
(3)代表プラントにおける例
a.原子炉冷却材圧力バウンダリの減圧機能
b.炉内の溶融炉心の冷却機能
c.格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却機能
d.格納容器の冷却・減圧・放射性物質低減機能
e.格納容器の除熱・減圧機能
f.サポート機能=電源設備、計装設備、第2制御室、通信設備
(4)外部からの支援が受けられる期間(例えば、少なくとも7日間)必要な設備が機能するのに十分な機能を有する設計を行う。
〈耐震・耐津波性能強化〉
【地震・津波の評価方法を厳格化、特に津波対策を大幅に強化】
(1)津波に対する基準を厳格化
既往最大を上回るレベルの津波を「基準津波」として策定し、基準津波への対応として防潮堤等の津波防護施設等の設置を要求。
(2)高い耐震性を要求する対象を拡大
津波防護施設等は、原子炉圧力容器等と同じ耐震設計上最も高い「Sクラス」に。
(3)活断層の定義を厳格化
耐震設計上考慮する活断層は、後期更新世以降(約12〜13万年前以降)の活動が否定できないものとし、必要な場合は中期更新世以降(約40万年前以降)まで遡って活動性を評価。
(4)より精密な基準地震動の策定
サイト敷地の地下構造を3次元的に把握。
(5)地震による揺れに加え地盤の「ずれや変形」に対する基準を明確化
Sクラスの建物・構築物等は、活動性のある断層等の露頭がない地盤に設置。
お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで
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