統合的安全確保の視点必要 新安全基準シンポ

原子力発電所の新安全基準について議論するシンポジウム(日本原子力学会他主催)が17日、東京・港区の国際文化会館で開催され、原子力規制委員会の安全基準立案で中心となった更田豊志委員、学会で福島発電所事故調査を率いる田中知氏(東京大学教授)も交えて意見を交わした。

原子力発電所の新安全基準については、現在、規制委員会で、(1)設計基準(2)シビアアクシデント対策(3)地震・津波――の論点ごとに、骨子案が取りまとめられ、28日までパブリックコメントに付せられているところだ。議論に先立ち、これらのうち、地震・津波を除く論点について、更田委員が説明した。

これに対し、学会の立場として、中越沖地震に伴う施設健全性調査にも携わった関村直人氏(東京大学教授)より、3月までの取りまとめを目指し、専門家が公開議論を行う福島事故セミナーの活動が紹介され、産官学とのコミュニケーションを通じた信頼関係構築、安全研究のあり方に関する俯瞰的なロードマップ提示など、幅広い意見を求め最新の知見を集約していく学協会の役割を主張した。

また、新基準骨子案の個別論点に関して、奈良林直氏(北海道大学教授)が、津波に対する深層防護強化のイメージを図示し、防潮壁・水密扉から防災強化に至る各層いずれの段階でも、「冷やす」ことが重要と指摘したほか、格納容器の破損防止対策について、海外の事例も紹介しつつ、周辺地域を汚染させない抜本的対策としてフィルターベント設置の必要などを述べた。

続く、パネルディスカッションでは、新基準骨子案の検討に係った山口彰氏(大阪大学教授)らを加え、一般参加者からも意見を求めながら、議論した。規制委員就任時からの考えとして、更田氏は、「リスクが残っている」という議論の必要を強調し、委員会として近く安全目標・性能目標の考え方を示していくと述べた。これに対し、技術的観点から、奈良林氏は、「何が危険なのか」という視点がこれまでの設計に欠けていたと指摘した。また、設計基準とシビアアクシデント対策の連続性について、山口氏は、ハザードと施設の防護、公衆と環境のリスク抑制の関係を図示しながら、「どうすれば統合的な安全確保がとれるか」などと、規制委員会への期待を示した。

新基準施行後の安全審査について、更田氏は、「独立性は大事だが孤立してはいけない」として、事業者とともに安全強化に努めていく必要を述べ、規制に導入できる良好な提案が事業者側から示されることにも期待をかけた。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで