29年の操業開始見込む スウェーデンの廃棄物処分計画

原子力発電所から出る使用済み燃料を始めとする高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分は、大規模な原子力発電施設を有する各国が直面する重要課題だが、北欧フィンランドとスウェーデンでは使用済み燃料を再処理せず深地層に埋設処分する最終処分場の建設サイト選定を実質的に終え、建設認可を申請するなど世界で最も処分事業が進展している。

日本の原子力発電環境整備機構(NUMO)ではこうした先行国の実例を日本が参考とするため、両国の担当事業者による講演会を1月末に開催。両国における使用済み燃料処分事業の現状を紹介した。

スウェーデンでは現在、既存の原子炉10基から出た使用済み燃料約6000トンを原発サイトの1つであるオスカーシャムの集中中間貯蔵施設(CLAB)で湿式貯蔵中。閉鎖した2基分を含めると既存の10基が閉鎖されるまでに使用済み燃料は1万2000トンまで増加すると見込まれており、原子力事業者4社はこれを処分する事業の主体としてスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)を共同設立した。

SKBの現在の計画では、CLABの容量を拡張するとともに、使用済み燃料を銅製キャニスターに封入する施設(CLINK)をCLABの隣接区域に、また、最終処分場をフォルスマルク原発が立地するエストハンマルの結晶質岩盤に建設することになっている。必要な資金は事業者が原子力による発電量1kWhあたり0.022クローナを徴収し、放射性廃棄物基金に積立中。2011年末現在の調達額は463億クローナにのぼっている。

サイトの選定に当たってSKBは1993年から国内8か所でフィージビリティ・スタディを実施。2000年11月にサイト調査をオスカーシャム、ティーエルブ、エストハンマルの3つの自治体で行うことになったが、実際の作業は自治体の承認が得られたオスカーシャムとエストハンマルに絞られた。SKBは両自治体と地域支援協定を締結し、09年にサイトとして選定されたエストハンマルには同協定に従ってインフラ整備や事業開発、教育支援等のための予備出資金として20億クローナの25%が、また、選定からもれたオスカーシャムには立地による恩恵が得られなかった代償として残りの75%が提供されることになった。

処分場ではKBS-3と呼ばれるシステムをSKBが開発。(1)二重構造の銅製キャニスター(2)緩衝材のベントナイト粘土(3)地下500mの結晶質の地層――という多重バリアで廃棄物を覆い水分の侵入を防ぐというもので、フィンランドで同じ事業を担当するポシバ社も同システムを採用している。1万2000トン分の使用済み燃料に相当する6000本のキャニスターを埋設する設計で、建設・操業開始までに15年間、その後60年間の通常操業を見込んでいる。

同処分場およびCLINKを着工するには、それぞれの立地地域であるエストハンマルとオスカーシャム両自治体の承認に加えて、放射線安全機関(SSM)と環境裁判所の審査を経る必要があり、SKBは2011年3月にこれら2機関に立地・建設許可を申請。両機関がそれぞれ、原子力法と環境法に基づく審査を実施し、最終的に政府が認可を発給することになる。

現在のスケジュールでは18年末までに建設許可を取得し、翌19年1月に着工、29年以降に操業開始が見込まれている。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで