福島第一事故 背景と根本原因を究明へ 深層防護など議論 原子力学会 年内にも最終報告書

日本原子力学会(学会)東京電力福島第一原子力発電所事故に関する調査委員会(委員長=田中知・東京大学工学系研究科原子力国際専攻教授)は3月27日、近畿大学(東大阪市)で開催された「春の年会」で中間報告を発表した(=写真)。

学会は、専門家集団として、深層防護など、安全の基本的な考え方に踏み込んで議論しており、たとえば深層防護の考え方については、今回の事故を踏まえて認識を改め、安全目標を定めて社会的にもシビアアクシデントへの対応を整備していくことが重要との認識を示している。

また各課題への対応を具現化し原子力施設の安全確保をはかるため、国民はもとより、規制当局や事業者などの関係者のコミュニケーションが重要とし、そのようなコミュニケーションの場づくりにも貢献していく考え。

報告は(1)「放射線のリスクから人と環境を守る」という原子力施設の安全確保の目的の共通認識(2)共通の目標とステークホルダー間のコミュニケーションの重要性(3)外的内的事象対応や多層、人・ソフト・技術など俯瞰的考察の重要性(4)原子力災害の実態を科学的・専門的視点から分析してその背景や根本原因を明らかにし、基本となる安全の考え方について提言を行うなど学会の役割および責務――などを重要な視点として留意。

今回、学会員からのアンケートについても報告され、「安全性に対する慢心、現状に対する自信過剰、謙虚さの欠如があった」、「原発は電力会社が責任を持って運用しているとの認識があり、日本の原発の実情、特に安全性を直視することを学会の役割の外に置いていた」などと反省する声が紹介された。また「社会に対し学会がどのような責任を持つか、それをどのように実現するかというビジョンを設定」する必要があるとの声もみられたという。

このあと事故分析、安全体制の分析を進めて課題、教訓を浮き彫りにする方針。年内に最終報告書をまとめる。


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