シリーズ 英国Q&A (3)日本企業による英国での事業展開における重要点(前半)


日本企業が英国で事業を行う場合、英国法人を設立する必要はあるのでしょうか?

その必要はありません。しかし英国で行う事業の種類によっては、英国法人の設立をお勧めするケースもあります。

大規模または長期的なビジネスを検討している場合は、日本企業は英国での正式な事業拠点を設置した方が良いこともあります。事業拠点の設置においては、以下を含む様々なオプションがあります。(1)英国における事業所を開設・登記する(2)日本法人(または非英国法人)の子会社として、英国法人を設立する(3)既存の英国法人の株式を取得する。ただし、これらは適用される税制が異なることがありますので、税務専門家のアドバイスを求めた方が良いでしょう。

日本企業の英国における事業所はどのように設立するのでしょうか?

日本企業が、英国法人設立・買収をせずに英国に事業拠点を設置したい場合、英国における事業所を会社登記庁(Companies House)に登記する必要があります。登記には、以下のような会社組織や経営体制等を示す書類の提出が要求されます。(1)認証済の会社定款等の英訳(2)日本企業の役員等詳細(3)英国内での事業の代表権を付与された、英国における事業所の代表者氏名・住所。

これらに加え、日本企業の英国における事業所は、日本の法令に基づき、日本での提出が義務付けられている一連の日本企業の財務関連書類を、会社登記庁に提出しなければなりません。

その他、英国における事業所に関する詳細は、会社登記庁のウェブに掲載されています。

(http://www.companieshouse.gov.uk/about/pdf/gpo1.pdf)

日本企業は英国法人をどのように設立すればよいでしょうか?

日本企業は、英国で新法人を設立したり、既存の英国企業の一部または全部の株式を取得することが可能です。英国における事業会社は主に、(1)非公開有限責任会社(2)非公開有限責任保証会社(3)非公開無限責任会社(4)公開有限責任会社――の4種類です。

なお、外国企業が英国で事業をする上で、最も一般的に使用される法人は、非公開有限責任会社です。有限責任会社を使用する利点(公開非公開を問わず)としては、以下の点が挙げられます。

▽株主の賠償責任は出資した分だけに限定される。

▽独立した法人として、法人名義で資産を所有し、契約を結ぶことができる。

▽経営面での自由度が高い。

▽国際的に認知された事業体である。

設立するには、会社登記庁に(1)定款(2)株主の氏名と所有する株式の種類・数(3)会社の役員の氏名(4)会社の名称と所在地等を申告する必要があります。新法人の設立には通例3〜5日かかりますが、即日設立サービスも利用可能です。その他、英国法人設立に関する詳細は、会社登記庁のウェブに掲載されています。

(http://www.companieshouse.gov.uk/about/gbhtml/gp1.shtml)

法人設立後、株式保有や経営のしくみが単純でない英国法人は、経営体制を少しでも変更する際には、事前に法律専門家に相談されることをお勧めします。

また、法人設立後は、年次届出書(役員や株主の詳細)や年次財務諸表を会社登記庁に提出する義務があります。かかる提出義務を怠った場合、法人、役員共にペナルティが課されることがあります。

なお、英国企業の株式取得手続は複雑なため、日本企業が既存の英国企業の一部または全部の株式を取得する際は、様々な法律面、税制面での問題を検討する必要があります。

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回答者 ジョージ・ボロヴァス(ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン外国法事務弁護士事務所 パートナー、国際原子力プロジェクト長)、ヘレン・クック(同シニア・アソシエイツ、原子力部門所属)

構成 石井敬之

(本Q&Aは一般的な情報提供を目的としたものであり、同外国法事務弁護士事務所の法的意見や法律面での助言として提供しているものではありません)


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