ブラックホール直接証明に一歩 「すざく」の観測成果

理化学研究所、京都大学、日本大学、東京大学の共同研究グループ(代表=山田真也・理化学研究所仁科加速器研究センター玉川高エネルギー宇宙物理研究室基礎科学特別研究員)は4日、代表的なブラックホール天体である「はくちょう座X‐1(想像図=左上)」をX線観測衛星「すざく」で観測し、ブラックホールに高温ガスが落ち込む最後の100分の1秒に10億度以上にまで急激に加熱され、高エネルギーX線を出すことを突き止めたと発表した。

ブラックホールと恒星がお互いの周りを回り続ける「ブラックホール連星」の周囲には恒星からのガスが取り巻いており、そのガスがブラックホールに吸い込まれる瞬間、X線の強度が激しく変化する。ブラックホール近傍のガスは高温で主にX線で明るく光るため、その明るさや色(波長)、それらの時間変化を調べることで、ブラックホールの極近傍のガスの流れを「観る」ことができる。

同研究グループは、X線観測衛星「すざく」に搭載された高感度の硬X線検出器を用いて、X線強度や波長の細かな変動が測定できる独自の「重ね合わせショット解析」を適用し、ガスがブラックホールに落ち込む最後の100分の1秒間に10億度以上まで急激に加熱されることを発見した。

中心天体に表面があった場合、表面からの放射がガスを冷やすため今回のような観測は不可能。よって、今回の観測は中心に表面のない天体「ブラックホール」があるということにつながる。

まだブラックホールの厳密な存在証明はなく、X線で「観る」ことでブラックホールの直接的な証明に一歩近づいたと言える。


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