サイト選定手続き改めて法案化 独の最終処分場計画、ゴアレーベンを白紙に

ドイツ連邦政府は9日、連邦環境相と州政府および政党の代表らを含めた協議の結果、使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物の最終処分場サイト選定に関するこれまでの作業を白紙とし、連邦政府と州政府、野党などの合意ベースで改めてサイト選定を開始する手続き法案を早急に議会下院に提出し、休会前の7月初旬までに成立させると発表した。

今回の発表は3月24日に連邦環境・原子力安全省(BMU)のP.アルトマイヤー大臣が、処分場サイトの有力候補だったゴアレーベンを擁するニーダーザクセン州政府の首相および環境相との間で合意に達した内容をサイト選定作業に関する具体的な法案の骨子として示したもの。

ゴアレーベンの適性を巡る数十年間の論争に終止符を打ち、連邦と州の両政府や各界の関係者で構成される24名の委員会が2015年末までに安全要件やサイト選定基準に関する提案を策定。31年までに特定の候補地を議会に勧告すると見られている。米国でユッカマウンテン処分場計画が白紙撤回され、合意ベースでのサイト選定が改めて始められることになったのと同様、処分場選定における社会全体の同意の重要性がドイツでも明確に認識される結果になった。

法案では「原則」として国民の合意に基づいて解決策を探るとしており、国内で発生した廃棄物は国内で処分することとした。候補地は科学的根拠に基づいて選定し、決定するまでの全ての段階で透明性と国民の参加が前提となる点を明記。各段階の重要な判断は議会が下すとしている。

また、「方策」として、ゴアレーベンのように特定のサイトを除外することなく、技術的に立証可能な基準に基づいて、民主的で合法な手続きによるサイト探しを段階毎に実行するとしている。

ドイツでは当初、原子力発電所からの使用済み燃料は再処理していたが、2002年の原子力法改正により、英仏ですでに再処理した分を除き、そのまま直接処分することとなった。使用済み燃料は現在、各原子力発電所サイトおよび、ゴアレーベンにある中間貯蔵施設に輸送貯蔵兼用キャスク「CASTOR」に入れて貯蔵中。再処理後の返還ガラス固化体も同施設に搬入している。

ゴアレーベンは1970年代に最終処分場の建設サイトとしても選定された。安定した岩塩ドームに使用済み燃料と返還ガラス固化体を処分するための適性調査が行われてきたが、付近で地下水脈の存在が判明したことから地元の反対運動が激化。政権交代等により2000年から10年間、調査が停止した時期を経て、10年から掘削などの調査が復活していた。

原子力産業界の見解

ドイツ原子力産業会議(DAtF)によると、これまでの調査活動に産業界が16億ユーロ以上を投入してきたゴアレーベンは、新たなサイト選定プロセスでも候補地の1つに残留。これについては歓迎の意向を示した。しかし、今後の候補地選定や処分場建設に要する20億ユーロが廃棄物発生者である原子力事業者の負担とされた点については、「法的な根拠はなく、彼らにもそれらを支払う用意はない」と言明した。

また今回の合意の1つとして、ゴアレーベンでの掘削調査終了と研究所の建設計画中止、同地への放射性廃棄物の持ち込み停止があるが、同地の中間貯蔵施設は国内で唯一、返還ガラス固化体の受け入れ認可を保有。行き場を失う返還廃棄物に対する法的配慮が欠けていると指摘している。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで