〈J.レガルド世界原子力発電事業者協会議長 孤立避け知識の共有を〉

世界原子力発電事業者協会(WANO)は、チェルノブイリ事故直後の1989年に発足し、会員間の相互支援、情報交換、切磋琢磨を図ることにより、パフォーマンス評価、ベンチマーク、および向上に協力して取り組み、世界の原子力発電所の安全性・信頼性を最高レベルに高めることを使命としている。

福島第一発電所事故から6日後、WANOは最初の重要事象評価報告書(SOER)「燃料損傷に関する事項」を発行した。続いて「使用済燃料プールの冷却機能損失に関する事項」、「全交流電源喪失に関する短期対策」に関するSOERを発行しており、間もなく4番目の組織・ヒューマンパフォーマンスに関する事項についてのSOERを発行する。全てのWANO会員がSOERに対応し、WANOは回答を分析し報告書を発行して勧告を行い、ピアレビューでチェックされる。

WANO理事会は事故直後に設置した15人のCEO会員から構成される「ポスト福島委員会」で、(1)WANOの活動範囲の拡大(2)世界規模の総合的事故対応戦略の改善(3)WANOのピアレビュー手順および格付けによるプラント評価を含むWANOの信頼性の向上(4)WANOの可視化と透明性向上(5)内部の一貫性の向上――における措置に関する勧告を策定し、組織自体の改善も図っている。

WANOは国際協力も進めており、2012年9月IAEAとの協力覚書に署名したほか、国際原子力規制者会議(INRA)等国際規制当局のグループや、電事連や米国原子力エネルギー協会(NEI)等産業界とも協力を行っている。原子力の運転には必ずリスクがついて回る。WANOは他の組織と共に、能力の高い専門家やエンジニアによるピアレビュー、技術支援ミッション、運転経験共有などの効率的なプログラムを実践し、活用することによって安全性を向上していくことが求められる。

原子力産業界とパブリック・アクセプタンスが大きく揺らいだ今、オープンな姿勢で互いに知識を共有し、孤立を避けることこそ原子力安全を高める鍵となる。


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