〈A.リーシング世界原子力協会理事長 放射線恐怖の対策必要〉

世界原子力協会(WNA)では、新戦略方針として、原子力に関するコミュニケーション、原子力産業界内の協力、原子力情報管理などについて新戦略方針をまとめた。

福島第一発電所事故は世界に大きなインパクトを与え、各地で原子力反対運動が起こったが、多くの国で原子力への支持は変わらなかった。

放射線専門家としての立場から福島事故を振り返ると、公衆とのコミュニケーションにおいてチェルノブイリ事故の教訓が全く生かされなかったことに失望した。チェルノブイリ事故では、放射能よりも、摂食制限・行動制限などで人々に与えた恐怖感によるストレスの方が健康に悪影響だったことが分かっており、実際には不必要な不安が引き起こされたことが反省点だった。日本でも放射線レベルが減少した今、直面するのは技術的な問題よりむしろ社会・政治的なものとなっており、コミュニケーションが重要である。放射線への恐怖の苦しみについては専門家が真摯に取り組まなければならない。

福島事故による避難地域の大半は放射線による影響が考えられないレベルにまで線量が下がったが、帰還には放射線リスクのコミュニケーションが欠かせない。産業界と放射線専門家が協力し、マスコミも恐怖心をあおることを止めなければいけない。

原子力を支持する国々は、環境の保護や経済的安定など原子力発電が提供する利点のために推進している。日本は原子力発電を停止して現在化石燃料に依存しており、地球温暖化につながる二酸化炭素排出の増加や貿易赤字が生じている。これは全世界の経済や気候にも影響を及ぼしている。

原子力産業界は失われた信頼を回復するために働かなければならない。過去40年にわたり日本の成功に重要な役割を果たしてきた原子力発電は、引き続きその役割を果たし続けていくべきだ。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで