〈P.ファロス欧州委員会エネ総局副総局長 段階踏まえ政策検討を〉

欧州のエネルギー政策は、2020年までの目標として(1)エネルギー効率20%向上(2)CO排出量20%削減(3)再生可能エネルギー割合20%増加――を掲げ、2050年までにエネルギーシステムの脱炭素化を図っている。しかし、その中間点である2030年の状況が不確定なため、競争力、供給保障、持続可能性を考慮した政策枠組みを考える必要がある。

欧州理事会のエネルギーロードマップ2050では、温室効果ガスを1990年比で80〜95%削減することを目指す。現在の傾向に基づくシナリオでは、50年までに温室効果ガス40%削減となるが、より高い削減率達成のため、高エネルギー効率化、供給技術の多様化、再生可能エネルギー源の高位推移化などの脱炭素化シナリオを挙げた。これらの対策で温室効果ガスを80%削減をめざすが、いずれにせよ今後電力の役割は高まると予測される。

今後多くの原子力発電所は寿命を迎える。原子力発電の長期運転および新規建設は、雇用や経済成長の面からも多大な効果が期待できる。また化石燃料の輸入量と輸入費を減らすためにも原子力の役割は大きい。

今後の展望としては、(1)温室効果ガス削減と再生可能エネルギー比率を向上し2020年目標を達成(2)後悔しないオプションの選択(3)ガス・電力市場の統合と各電力市場における相互連携(4)低炭素へ向けた革新的ソリューション(5)ピアレビューでの提言の実施や地震などの課題抽出とその対策等原子力安全への信頼性回復(6)再生可能エネルギーと原子力の2本立てアプローチの検討――などが挙げられる。今後、2030年に向けてのマイルストーンを策定し、将来のエネルギーシステムや政策について長期的視点から健全な対話を進めていくことが必要だ。


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