〈ヴァーツラフ・バルトゥシカ・チェコエネルギー安全保障特使〉

チェコでは過去10年、原子力に対し、70%もの国民支持率が得られている。なぜかというならば、規制当局が非常に優秀であるということを強調したい。さらに、これまで、多くの原子炉機器類を製造してきた実績もある。

国内で、2基の増設を計画するテメリン原子力発電所の入札は、09年にまず、候補者が5から3に絞られた。11年に、6000ページもの入札書類を発行し、ドキュメンテーションを実施した結果、そのうちで、12年にフランス・アレバ社が失格となった。現在、ロスアトム社とWH社の2社に絞られており、今夏までには最終決定したい。「われわれは非常に厳しい顧客であり、満足しなければどこも選ばれない」ということを明言している。

ここで、原子力産業界に言っておきたいのは、「反対論者がいてこそ」ということだ。それにしても、科学に対する一般市民の理解度が低くなっているということは問題であろう。例えば、自身の経験で印象に残っているのは、あるヨーロッパの国の市民対話集会で、「電気はいらない。ろうそくの灯りでテレビが見られるから」という意見を聴いたことだ。

これは笑い話で済ませるかもしれないが、われわれは、原子力を、「次世代の人材養成の基盤」だと考えている。そのような中、日本の産業界にもいえることかもしれないが、最も危惧されるのはノウハウの喪失である。科学・工学を学ぶ若者が不足する状況で、人材をこの先10年も維持できるのだろうか。実は、一番脅威となるのは、反対市民などではなく、「無知」ということなのではないか。


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