〈岡本議長の冒頭説明〉

セッションの趣旨について最初に問題提起しておきたい。

国際原子力機関(IAEA)が定める基本安全原則には、(1)一義的責任は事業者にある(2)政府の役割は法令上、行政上の枠組を維持すること(3)放射線リスクを生じる施設と活動では安全に対するリーダーシップとマネジメントが重要――があるが、日本ではリスクとは関係の薄い法令遵守を集中的に見るような規制がなされ、総合的なリスク判断に欠けていたのが大きな課題に挙げられる。

例えば、福島第一とスイスの原発にはそれぞれ、ベントが装備されていたが、過酷事故時に放射性物質を除去して外に逃がすというシステムとして考えた場合、福島の方は機能しなかった。今後の原子力安全には総合的なリスクを低減することが必要であり、総合的なシステムを俯瞰できる人材が必須だ。

局所的にある部分のリスクを下げると別の部分でリスクを増やすこともあるので、福島事故を大きな反省点に、こうした総合的なリスクの低減活動に資源を集中的に投資すべきである。活断層の議論も、非常に小さなリスクを一生懸命さらに下げようとしており非常に危険なことだと思う。

深層防護はリスク低減の大きな思想であるので、これをしっかり踏まえて総合リスクを考えるのが重要。ただし、それでも想定外はあり得るということも予め考えておかねばならない。ハードウェアは想定外に対応不可能であり、発電所や規制当局の緊急時マネジメント能力を充実させていく視点が必要だ。同時に、緊急時の教育訓練も無限に継続的に維持し、改善につなげていくことのみが想定外への対応の唯一の解ではないかと考える。


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