〈A−C.ラコスト前フランス原子力安全庁(ASN)長官〉

ASNは長い間独立の機関だったが、2006年に原子力に関する透明性と安全性に関する法律の下で独立の行政機関になった。特別の省庁に属するのではなく、議会の監督下にある。常勤の委員5名によって運営されており、仏放射線防護原子力安全研究所から専門技術の支援を受けている。

規制対象としては仏電力(EDF)が一元的に運転する原子炉58基のほかに、燃料サイクル関連施設のすべて、放射線源を使用する数千の医療施設、放射性物質の輸送があり、予算は1億4200万ユーロ。4500名強の職員が原子力分野で年間800回以上の検査を実施している。

福島事故の教訓を十分反映するには10年くらいかかると考えている。ストレステストはEU加盟15か国とスイス、ウクライナで実施され、ASNは仏国の原子力発電所の安全性は十分なレベルにあると結論付けたが、今後も極限状況下の堅牢性を出来るだけ高めるため、EDFは100億ユーロかかると推定した。

欧州全体の取り組みとしては、(1)定期安全評価は安全性の継続的改善で有益(2)自然災害と安全裕度の評価で欧州の統一指針が必要(3)発電所の堅牢性を設計基準を超える事象まで高める必要性(4)格納容器の閉じ込め機能を維持する必要性――が勧告された。規制機関の課題は(1)能力と厳格さ(2)独立性(3)透明性――で、自分はASNメンバーに「独立ということは孤立とは全く違う。密なコミュニケーションをすべての当事者と取る必要がある」と注意していた。

福島事故により「いかに安全対策を整えても依然として事故は起こり得る」ことが実証された。発電所では事故の発生を防止し、発生後はその影響を緩和、敷地外の汚染も回避可能な発電所が設計、建設、運転されるよう、規制当局が努力しなければならない。


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