〈松浦祥次郎・原子力安全推進協会代表〉安全確保の目的は「放射線障害の危険から公衆と事業従事者、環境を防護すること」であり、福島では安全確保の目安である立地基準からの逸脱はなかった。しかし、原子力規制委員会は規制のための具体的な安全目標を「放射性物質の大量放出の原因となる炉心崩壊確率の制限と最大放出量の制限」に決定。これは安全確保対策実現に対する考え方の基本的枠組であるパラダイムの大きな変化(シフト)だと言える。 過去の教訓を振り返ると、TMI事故により、(1)システム全体の中に潜む弱点を除去する手段として確率論的リスク評価が極めて有効(2)マン・マシン・インターフェースの重要性――が再認識されるなど、安全確保のパラダイムに大きな影響が与えられた。また、チェルノブイリ事故により、安全文化は安全確保のパラダイムの最重要要素と位置付けられることになった。 福島では外的事由による過酷事故発生をいかに防護するかが新しい安全確保パラダイムの最重要課題であると示した。日本における同パラダイムの決定的な反省点は、事業者が「規制基準を遵守すれば安全確保責任を全うした」と認識していたことだが、「安全性向上に継続的に努力し続けることこそ事業者の責任」という認識に転換することが今回のパラダイム・シフトの要。これを具現化する仕組み作りとして、原子力安全推進協会(JANSI)が設立された。 JANSIの決意は「たゆまず世界最高水準の安全性を追求する」ということで、(1)世界トップレベルの安全確保の情報収集と安全性向上指針の設定と継続的改善(2)指針に基づく事業者の安全性水準レビュー(3)安全性向上に関する情報共有(4)事業者トップとの定期的な意見交換により安全性水準と向上必要事項の認識確認――などの活動を通じて事業者の安全性確保水準向上を支援していく考えだ。 お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |