〈モスカレンコ コロステン市長 住民の健康が最重要 前向き姿勢引出す復興を〉

ウクライナのコロステン市から原産年次大会参加のため来日したボロディミール・モスカレンコ市長が4月26日、東京都内で記者会見を行った。席上、モスカレンコ市長はチェルノブイリ事故の被害から復興した経験について述べ、同市の子どもたちによる「福島とのつながり」をテーマとした絵のコンテストでの優秀作品もスライドで紹介した。

チェルノブイリ事故で、同市は北西風を受けて汚染被害が広がったため自主的避難勧奨区域に指定されるなど影響が市民生活に広がった。モスカレンコ市長によると、同市は事故直後、放射能測定器を入手するところから始め、汚染の測定に力を入れ汚染地図を作成するなど状況把握につとめたという。状況の把握と情報の提供が非常に重要で、「現在では事故前のレベルにまで線量が低下したが、土壌内の検査などを行い、地域の汚染度を定期的に公表を続けている」と述べた。

また、経済復興の重要性を指摘したモスカレンコ市長は、コロステン市は被災地でありながら、流入人口も多く出生率も増えていることを強調。産業面でも発展して工業生産の伸び率は168%に及んでいることを紹介した。

またコロステン市自体は規模はそれほど大きくないながらも、750社の法人登録企業があり薬や化粧品関係などの近代的な工場もどんどん増えており、欧州内で最良の工業地域であるとの評価を受けていると述べた。

このほか、香水や家具材など、地域に特化した名産品も生み出し若手世代の定住に必要な産業、賃金の向上も実現しているという。

福島第一原子力発電所の事故について、モスカレンコ市長は、「汚染の状況をよく知ることが重要だ。汚染度を空から、地上から、そして食品なども調べ、各ゾーンについて詳細に調査していくことが大切だ」と述べるとともに、かつてコロステン市から働きかけをして法律制定を実現した経験を紹介し、住民の保護や汚染地域の土地の処遇などの面で法基盤を整備することも重要と指摘した。

放射能への懸念など心理面の負担に直面した住民のリハビリ対策に力を入れてきた点を強調した同市長は、同市に設置された社会心理リハビリセンターなどを通じた活動によって、根拠のない放射線に対する恐怖感をなくすため客観的で開かれた情報提供を進めてきた経験も紹介した。また、同市長は、「最優先されるべきなのは何よりも人の健康」と、住民の前向きな姿勢を引き出す施策が復興の要(かなめ)であると強調した。


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