市場は効率化・・・ されど料金は割高? 自由化の期待と裏腹に 電中研がレポート 米国市場事例を調査

電力中央研究所はこのほど、「米国の電気事業者における発送電分離の評価―発電の費用効率性と電気料金への影響―」と題する報告書をまとめた。機能分離による発送電分離を採用する米国の電力自由化について発電部門における費用効率性と電気料金への影響の観点から分析した。

分析の結果から、火力や原子力発電の費用効率が改善したことが確認されたが、電力料金の低下につながり電力使用者にメリットがあったとは必ずしも言えない状況があることがわかってきた。

米国では、送電系統の運用だけを独立系統運用者・地域送電機関(ISO/RTO、以下RTO)に集約する形態と、従来通りの垂直統合形態(発送電一体)の両方が併存している。電中研では、米国型の発送電分離が発電部門の費用効率性と電気料金水準に与えた影響について、RTO導入で発送電を分離している地域とそれ以外との比較により、定量的に検証することを目的に分析を進めてきた。その結果、効率性については、原子力発電では、RTO導入地域・非導入地域とも1990年代に改善しており、規制の合理化で設備利用率が向上したことが要因とみられる。一方で、火力発電も同時期に効率性は改善したが、2000年代の燃料高騰期には悪化している。ただしRTO導入地域では非導入地域に比べて悪化の程度は抑制されていたことがわかった。

一方、RTOの創設が電気料金に与えた影響を1988年から2006年の電気事業者のデータから分析したところ、RTO導入によって電気料金が上昇する傾向がみられた。この結果をただちに日本の電力システム改革にあてはめるわけにはいかないが、自由化の恩恵への期待が必ずしも実現していない状況が米国の事例から示唆された。

このため電中研では、RTOの役割や、市場の創設・運営や送電網の運用にかかる費用などの観点から、さらに分析を掘り下げる方針。

調査のなかで、米国では消費者団体が電力市場に意見を反映させにくい現状に不満を募らせている状況も見られ、RTO導入がかえって市場を複雑化し売り手優位のマーケットになっている面が考えられるという。

こうした海外の状況をきちんと調査・分析していくことが、日本の電力システム改革の最適な姿を検討するうえで欠かせないといえるだろう。

なお、電中研では、現在もいくつか電力システム改革や料金制度などの海外事例調査を進めており、今後わかりやすく調査の内容をまとめて情報発信等していく考え。


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