「時代ごとの新知見を取入れ」 女川原子力発電所 安全確保の要因を聴く

東日本大震災で、震源に近かった東北電力の女川原子力発電所では、1、3号機が通常運転中、定期検査中の2号機は原子炉起動中だったが、3基すべてが設計通りに自動停止し、大地震発生の翌日未明までには冷温停止に導かれた。「止める、冷やす、閉じ込める」が健全に機能したのだ。

去る5月28日、東北電力の、主に東京支社から、実は、発災時に同発電所で対応に当たっていたというのだが、その当時の状況や、安全機能が確保された要因について話を聴く講演会が都内の大学を会場に行われた(=写真右上)。

「時代ごとの新知見を取り入れ対策をとってきた」ことを、安全に対する備えの思想として、同社は振り返り強調する。

発災時、発電所の安全性を維持するために必要な電源は、発電所外部から供給している送電線5回線のうち、1回線が確保され、非常用ディーゼル発電機も健全だった。その後、襲来した津波で、一部設備の倒壊や浸水などの被害はあったものの、発電所の主要構造物が設置された敷地高さを越えることはなかった。

東北電力では、女川発電所の安全機能確保の要因を、「地震・津波に対する安全裕度」、「様々な地震耐震対策」、「日常的な訓練」、「緊急対策室の機能維持」に整理し説明している。特に、津波対策について、同社では、1号機の計画当初から、最重要課題であるとの認識に立ち、外部専門家を含む委員会で討議を重ね、敷地の高さを14.8mとした。これは、過去の記録などによる発電所付近の津波の高さを大きく上回る設定だった。その後、2号機建設の際には、数値シミュレーション技術の活用や、869年の貞観津波の痕跡調査結果なども踏まえ、津波の想定高さを9.1mに引き上げ、敷地の法面を強化するため、コンクリート防護工を9.7mの高さまで設置した。

また、耐震安全性向上工事では、10年6月までに、1〜3号機の約6600か所が実施済みで、中越沖地震の教訓を踏まえた災害時の情報収集・伝達の重要性から、事務棟の耐震補強工事も同3月までに完了した。

このように、常にその時々の最新知見を反映しながら、安全対策を施していくなど、計画当初から今に至る安全への基本的な考え方と取組により、発電所の安全が確保されたものといえる。

当日、講演会に参集した主に原子力界OBの中からは、こうした津波対策強化の経緯に関して、自身の経歴に思いを馳せながら、今後の安全対策に活かすよう調査・分析を図るべきなどと、啓発を促す声も多々あった。


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