ベント改善指令を改定 米規制委 BWR事業者対象に

米原子力規制委員会(NRC)は6日、福島第一原発と同じマークT、U型格納容器を有する米国内のBWR31基(表参照)の運転事業者に対する昨年の指令を改定し、事故時の圧力、温度、水素濃度および放射線レベルを管理可能にするベント・システムの要求指令を発令した。

昨年3月にNRCは福島事故後初めて、3種類の安全強化指令を発令。そのうちの1つが31基のBWRを対象とするもので、I型原子炉ではベント・システムの改善を、またU型ではそうしたシステムそのものの設置を義務付けていた。

しかし今年3月には、1基当たり1500万ドルと言われるフィルター設置を一律に義務付けるのでなく、産業界や議会の意向を汲んで差し当たり1年間の技術評価期間を設定。フィルター設置のほか、既存システムの冷却性能向上などを通じたアプローチの両方を考慮するようNRCスタッフに指示した。

今回の要件はこうした流れを受けて昨年3月の指令を改定する内容。炉心損傷時に発電所従業員がベント操作可能となるよう要求するとともに、(1)事故で生じた蒸気を液化する圧力抑制プールの性能改善を発電所毎の燃料交換スケジュールに応じて2014年6月までに完了(2)ドライウェルのベント・シナリオを分析し、必要な場合は17年6月までにベント・システムを設置しなくてはならない――としている。

NRCスタッフはこのほか委員会の指示で、31基のBWRで格納容器の健全性を保持するプロセスの改善と、ベントされたガスから放射性物質をフィルタリングするための機能強化で戦略の実行規則を策定中。今月後半にも公聴会を開催し、同規則の技術基盤および安全強化指令を遵守するためのガイダンス準備で協議を行う計画だ。

産業界の反応

今回の指令について米原子力エネルギー協会(NEI)は「ベント問題に最も効果的に取り組むための産業界のアイデアに沿ったものだ」と評価し、目標達成が可能な段階的アプローチのタイミングを図っているところだと述べた模様。ただし、プラッツ社の調べによると、これらの要件を含め、米国内で稼働する全原子炉が福島事故に対応した要件を満たすには今後3〜5年で36億ドルが必要になるとしている。


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