シリーズ 英国Q&A (5)英国のエネルギー法改正案

英国のエネルギー法改正案の目的は?

英国のエネルギー法改正案は、昨年11月29日に議会へ提出されました。電力市場改革を主眼としており、低炭素電源の拡大と、電力供給の確保をねらっています。

具体的には、(1)英国のCO排出量削減目標(2020年までに1990年比34%削減、50年までに同80%削減)の達成(2)電源ミックスによる電力供給の確保(3)消費者負担の低減(4)欧州連合が設定した再生可能エネルギー導入目標の達成(英国は20年までに総発電電力量の15%を再生可能エネルギーでまかなう)――を目標としています。

改正案で原子力は、低炭素電源と位置づけられています。

改正案に盛り込まれたメカニズムは?

改正案は目標達成のために、以下のメカニズムを盛り込んでいます。

▽長期固定価格買取制度の導入
▽投資契約の導入
▽容量市場の創設
▽発電量あたりのCO排出量基準の設定

長期固定価格買取制度とは?

長期固定価格買取制度とは、エネルギー・気候変動大臣(DECC大臣)が指定する「適格発電事業者」と「買取事業者」との間で結ばれる長期契約です。発電事業者は契約期間中、固定価格を保証されます。

この固定価格が、「ストライク・プライス(行使価格)」と呼ばれるものです。行使価格は低炭素電源の導入支援に必要なレベルで設定されます。行使価格と実際の市場価格との差額が、売買双方によって補填されます。市場価格が行使価格を下回った場合、買取事業者は差額を発電事業者に支払い、上回った場合は発電事業者が買取事業者に差額を支払います。

発電事業者は、将来の市場価格の不確実性に左右されず、安定した収入を確保することが可能となり、新規の電源開発でリスクが解消されます。これにより投資や資金を呼び込むことが容易になり、英国での低炭素電源の開発プロジェクトが実施されやすくなります。

投資契約とは?

投資契約とは長期固定価格買取制度への移行的なメカニズムで、同制度の施行の前段階で、低炭素電源開発プロジェクトへの投資を促進することをねらっています。内容は長期固定価格買取制度とほぼ同じものです。

15年末あるいはDECC大臣が「適格発電事業者」と認定した日以前に、「適格発電事業者」とDECC大臣との間で結ばれる契約です。長期固定価格買取制度が発足すれば、投資契約がそのまま移行されます。

改正案の見通しは?

改正案の成立には、議会両院の承認が必要です。下院では、微修正が加えられた後、今月5日に396対8で承認されました。今後上院で審議される予定です。改正案の修正事項はすべて両院の承認が必要となり、女王の裁可を得て成立します。

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回答者 ジョージ・ボロヴァス(ピルズベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマン外国法事務弁護士事務所・パートナー、国際原子力プロジェクト長)、ヘレン・クック(同シニア・アソシエイト、原子力部門所属)

  (構成 石井敬之

(本Q&Aは一般的な情報提供を目的としたものであり、同弁護士事務所の法的意見や法律面での助言として提供しているものではありません)


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