社会学の立場から提言 学術会議 原災復興で改善求める日本学術会議の社会学に関する専門家分科会は6月27日、原子力災害被災地の回復と復興のための「取組態勢改善」に向けた提言を公表した。被害実態の検証に長期間を要し、健康影響に関する科学的見解が不一致といった原子力災害の特異性に鑑み、低線量被ばくの長期影響に対する統合的・科学的検討、避難者の生活拠点形成と地位保障のための「二重住民登録」制度など、「社会学の持ち味」で、具体的政策提言を取りまとめたもの。分科会を率いた舩橋晴俊氏(法政大学社会学部教授)が同日、学術会議本部で記者会見(=写真)を行った。 同専門分科会では、公開シンポジウムや合同学会の開催、被災地住民からのヒアリングなどを通じ、震災の被害構造と日本社会再建の道を模索してきた。その中で、特に、大地震が引き起こした福島原子力発電所事故は、国民の心身における不安、家族の生活設計の破壊、地域社会の解体など、多重なレベルの被害を引き起こしており、「災害史上の中でも極めて特異」とみて、日本がこれまでにたどってきた災害経験の歴史的進展に伴う形で段階的に整備されてきた「既存の法体系では対処できない」との考えから、社会学の立場で、原子力災害からの回復と復興に関する具体的提言の取りまとめに至った。 専門分科会の提言はまず、原子力事故で生じた重大な問題として、「科学および政府への信頼感の喪失」を訴え、原子力災害復興への重要課題となる心身の健康問題、生活再建、地域再生について、一般的提言を述べた。その上で、これら課題を達成するため、「取組態勢改善」の具体的提言として、第一に、低線量被ばくの長期的影響に対する統合的な科学的検討の場の確立を掲げ、多様な見解を持つ専門家たちが、賠償問題と切り離して議論を掘り下げていく必要を求めている。学説が分かれることなどに関して、舩橋氏は、「競合中であれば、それを発信する必要」も強調した。 この他、提言では、水俣病の教訓を踏まえ、被災者の長期的健康管理とともに支援措置ともリンクする「被災者手帳」の交付、住民参加を重視する「継続的訪問調査」の実施などを求めている。さらに、現在当面行われている避難先での「居住証明」発行では、住民の権利保障には不十分とみて、「二重住民登録」制度導入により、避難先での住民登録とともに、居住していた自治体の住民としての地位を付与し、復興計画策定などの決定過程に参画する仕組みの整備も提案している。 お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |