学術会議 原子力安全確保でシンポ 学術界の役割、リスコミなど議論

「原子力安全確保と技術者・科学者の役割」と題するパネルディスカッションが5日、日本学術会議主催の安全工学シンポジウムの一環として、同会議本部講堂(東京・港区)で行われ、日本原子力学会が福島発電所事故後の取組状況などを報告し、学術界の役割、リスクコミュニケーションのあり方について討論がなされた。

ディスカッションではまず、東京都市大学の村松健氏が、有識者による「原子力発電所過酷事故防止検討会」の提言を紹介し、その中で、原子力の専門家や学会等を軸として、広く国民とのコミュニケーションを行い、コンセンサスを得る必要が述べられていることなどをあげ、議論に先鞭を付けた。

原子力学会からは、東京大学の関村直人氏が事故後にシリーズで開催したセミナーの成果を、法政大学の宮野廣氏が学会標準の策定活動について、主に説明し、「深層防護」の考え方の重要性などを訴えかけた。

さらに、学会が立ち上げた事故調査委員会で現在、進められている原因究明や教訓抽出の一環として、学会の役職経験者を対象に行われたアンケート調査について、マスメディア関係に通じた日本原子力研究開発機構の佐田務氏が説明した。調査は、「なぜ事故を防止できなかったのか」、「どこに問題があったのか」、「これから何をすべきか」といったフレームで質問が設けられ、事後分析では、「知のマネジメント」、「学会の姿勢やタスク認識、会員の意識や規範」、「外環境との相互作用」の視点から回答を整理したとしている。佐田氏は、これらの結果から、「社会的アクター間のコンフリクト」の課題を抽出、例えば、施設の立地自治体による過度の安全要求や経済誘導により生じている構造は、電力会社と自治体の「敵対的分業」となっているとし、これを「相補的分業」に変えていく方策など、アカデミアに対し問題を投げかけた。

また、東海村臨界事故を契機に地域とのリスクコミュニケーション活動に取り組むHSEリスク・シーキューブの土屋智子氏は、リスク評価に関して、被害の生起確率、重大性等の数値データ以外に、「家に帰れない」といった事象がもたらすシナリオも掛け合わせて考えるなど、市民にとってわかりやすい情報として流せるよう、幅広い議論の必要を訴えた。

これらに対し、傍聴者からは、「正に『岡目八目』」として、専門家の見地に留まらず、一般市民の視点も活かすべきといった意見があった。


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