現実味欠け合意できず 仏国のエネルギー全国討論終了

昨年11月に仏国で始まったエネルギーの移行に関する全国討論は、18日に第9回目の全体会議が行われ、8か月におよんだ議論の総括文書をとりまとめて閉幕した。

原子力の発電シェアを2025年までに50%まで削減するというオランド大統領の公約実現方策を含め、2050年までのエネルギー政策を展望するのが目的だったが、議論に参加していた企業経営者団体らは「議論は合意に達しなかった」として文書の内容を批判。当初予定していた政府への勧告とりまとめには到らず、9月に政府に正式提出された後、これを叩き台とするエネルギー枠組法案の策定につながるかは微妙な状勢となった。政府は来年初旬にも、同法案を議会審議にかける計画だった。

今回の全国討論は、仏国における原子力政策が正式に一般大衆の包括的な議題にのぼった最初の例。1000回以上開催された関連イベントに参加した人数は、ビジネス界幹部のほか非政府組織や労組、議会議員、社会学者、経済学者など17万人を超えたとしている。

総括文書では議論の末に明確化された重要課題15項目を明記。原子力に対するアクションは「低炭素化と多様化および競争力のバランス」に関する1項目の中で取り上げられ、仏原子力安全規制当局(ASN)が5月に表明した「重大な機能不全がある原子炉を停止する必要性が生じた際、国内の発電システムに十分な余力があることは重要」などの見解に言及した。一方、当初の運転認可を満了した原子炉について、国がエネルギー政策上の理由により運転継続の可否を決定出来る可能性をエネルギー法案に盛り込むよう提案している。

同文書はまた、潜在的な政策目標の1つとして「エネルギー消費量を2050年までに半減させる必要がある」との認識を明記。これに対して仏国企業の最高経営責任者組合である「フランス企業運動(MEDEF)」を含め、3つの経営者団体と1農業団体が「非現実的であり、実現させる方策などない」と反発し、同意を拒否したという。

MEDEFは声明文の中で、「8か月も議論して、目標やその道筋、必要な資金の課題がまったく解決していない」と指摘。エネルギーの移行を実行する経済関係の当事者にとって、確実な方向性とルールは基盤であり、その明確化と設定は立法者の判断にかかっていると強調した。また、この移行を成功させるには、これを欧州全体、および国際的な背景事情の一部として捉え、仏国がこれまで良好な実績を収めてきた(1)競争力(2)安定供給(3)温暖化防止――という三重の目的と両立させねばならないと訴えている。


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