シェールガス革命は救世主になりうるか? 冷静な分析が必要に 日本への影響でエネ研 当面、効果は限定的と

シェールガス革命により、低廉なLNGの輸入に期待が集まっている。

「確かに輸入を進めることは良いことだ。輸入価格の下落効果も見込めるが、現実にどれだけの効果が期待できるか冷静に分析する必要がある」。

シェールガス革命の日本への影響を分析する日本エネルギー経済研究所の柳澤明研究主幹は、こう指摘する。

最近同氏がまとめた「シェールガス輸入による価格リスクの低減効果の分析」では、現実問題として価格、輸入数量の両面で日本のエネルギー事情を早急に変えていくほどの影響を期待できないことが示されている。日本企業が関連するプロジェクト分14・7Mtの米国産LNGの導入の影響について、2009年以降のデータに基づいて価格変動リスクと価格低減効果を分析したところ、価格変動リスクは19%低下、価格は8%低下する結果になった。

また計算上で、価格変動リスクを最小化する輸入量比率をポートフォリオ分析したところ、分析期間に依存し、米国産LNG輸入は50%から80%の間で推移した。

つまり、現状で期待できる米国産LNGを輸入しても直接的な価格低減の効果は1割程度に過ぎない。一方、価格安定に寄与するような輸入数量比率に、ただちに引き上げるのも現実には困難である。

そもそもLNG輸入は交渉事なので日本側の事情だけで決められないし、低廉な価格が今後本当に維持できるか、日本に輸入されるマージンをどうみるか、などの不透明要因があり、楽観はできない。

先に、同氏は昨年12月「米国産LNG輸入による負担低減効果」をまとめ、シェールガス革命の恩恵のみに頼っても震災後の燃料費増加をカバーしきれないとの分析結果を得ている。

うまく交渉して現状で可能な量の米国産LNGを低廉な価格($9MBtu)で輸入できれば平均価格は91ドル/t下落してLNG輸入金額は79億ドル(80円換算で0・6兆円)低減する計算になるものの、これでは震災後の輸入金額膨張を相殺するには十分でない。

ただ、仮に米国産LNG輸入と原子力発電の再稼働で2010年並みの稼働状況に復する場合を考えると、LNG輸入金額の低減効果は199億ドル(1・6兆円)で、シェールガス輸入のみに依存する場合の2・5倍効果があることもわかった。この場合、二酸化炭素の排出削減効果(141Mt)や発電用化石燃料費がkWh当たりで3・7円削減されるなど、米国産LNG輸入のみの場合とは桁違いの効果になる。

シェールガス革命の恩恵による価格の低下に目がいきがちだが、化石燃料増の量的な国民負担や環境負担を軽減するなど現実の問題は、はるかに複雑で困難といえる。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで