米NEI 「米原発の防護は万全」 脆弱性指摘する論文に反論

米原子力エネルギー協会(NEI)は16日、米国内の原子力関連施設のセキュリティ体制を不十分と結論付ける研究論文が公表されたのを受け、これに対する反論をウェブサイト上に発表した。

この論文はテキサス大・「核拡散防止プロジェクト(NPPP)」の研究者が作成したもので、原子力関連施設における潜在的な脅威を(1)核兵器の盗難(2)核兵器の製造に適した特種核物質の盗難(3)放射性物質の放出等を目的とした原発での破壊工作(4)使用済み燃料貯蔵プールからの冷却水排水で放射性物質を放出せしめる破壊工作――などに分類。米原子力規制委員会(NRC)を含む関連の3機関は核物質防護戦略として設計基礎脅威(DBT)に基づくアプローチを採用しているが、3機関で設定要件に統一性がないため施設毎に最大規模の想定攻撃にバラつきが生じ、攻撃される可能性の低い施設に過度な防護を施すなど財源の浪費につながるとした。

また、テロリスト達がこうした既知の防護策に戦略的に対応するという現実を無視。経費負担が高額なレベルのセキュリティも要求しているため、多くの場合それらは実行されないとしている。

特に9.11事件以降、原子力産業界は施設の核物質防護システムのセキュリティ改善に20億ドル以上を費やしたが、そうした改善が適切であったかは不明だと報告書は言明。NRCのDBTアプローチに対する批判は、(1)想定する敵の数(2)その使用武器(3)航空機による衝突攻撃と冷却水取水設備等への海からの攻撃を除外――などの点に集中させており、(1)に関するDBTでNRCは、19名のハイジャッカーが関与した9.11以降も、改定前の想定である「1チームに付き3名」をわずかに5〜6名に引き上げただけだと指摘した。(3)に関しても、DBTでは新しく建設する原子炉設計に航空機衝突影響の緩和要件が加えられた一方、既存炉では要件が課されていないとしている。

NEIの反論

これに対してNEIは、「原子力発電所が国内の重要インフラの中でも最も防護された施設の1つであることは広く知れ渡っている」と断言。このことは連邦捜査局(FBI)や国土安全保障省の評価も含め、独立の立場の専門家達も認めるところだと反論した。

その上で、NRCが米国産業内で最高レベルのセキュリティ基準を原発に設ける一方、産業界もこれをクリアしていると説明。連邦政府の情報機関や捜査当局との定期交流に基づいて、NRCは産業界が対処しなければならない脅威や民間の治安部隊が満たさねばならない厳しい基準を設定したと強調している。

NEIの見解では、NPPP報告は本格的なセキュリティ評価とは言えず、著者もそうした評価の際に必要となる安全保障情報にアクセスしていない。また、商業炉からのウラン燃料盗難の可能性を調査した多くの評価報告と同様、NPPPも、攻撃者が高照射された燃料集合体を何重にも厳重に防護された原子炉や貯蔵プール、あるいはスチールとコンクリートで作られたコンテナからどのように取り出し、動かすことが可能なのか説明していないと批判した。

NEIによれば、全米62サイトの原子力発電所では総勢9000名の熟練した武装警備員が施設の防護に当たっており、このうち60%が9.11以降に増強された部隊。その多くに軍隊や警察での職歴があり、連邦政府の規制当局が評定する非致死性訓練弾使用演習も含め、定期的に訓練と試験が行われている。このように連邦および州の政府、地元警察機関などと連携した包括的なセキュリティ対応計画により、発電所サイトでは大規模かつ盤石な防御体制が敷かれていると明言した。

NEIはまた、米国原発のセキュリティは9.11以前から保証されていたが、その後、発電所サイトの核物質防護を実質的に増強するために追加した20億ドル以上のセキュリティ投資により、現在の状況は一層盤石になっていると指摘。これまで米国における総発電電力量の5分の1を生み出してきた既存原子炉のそれぞれで航空機衝突の可能性が評価されており、原子炉燃料や使用済み燃料の損傷リスクが十分低い点を請け合った。


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