日本の情報発信手法に苦言 WNAのリーシング理事長

日本の原子力規制委員会(NRA)は先週、福島第一原発・地上タンクからの汚染水漏れに対する国際原子力事象評価尺度(INES)の評価を1から3に修正したが、こうした情報発信の仕方は海外も含めてメディアの混乱と不安を煽る結果になった。

これについて世界原子力協会(WNA)のA.リーシング理事長(=写真)は8月29日、「INESの適用と解釈における誤りが原子力安全に関するマスコミ報道を誇張させる結果を引き起こした」と指摘するコメントを発表、原子力事象情報の伝達においては状況に応じたコミュニケーションが重要になるとの警告を発した。

同理事長はまず、今回の日本の状況を「1つの原子力事象がコミュニケーション上の惨事に発展した」と形容。福島で貯蔵タンクからの汚染水漏洩という深刻な事象が発生したことについて、汚染が海まで達したという証拠はないままこの件は数日のうちに収束し、再発防止のための包括的対策も取られつつあるとした。

しかしながら、そのニュース報道はINESの適用と解釈のお粗末さから非常に混乱。これが国際社会の多大な懸念を引き起こし、現実の経済への影響を及ぼすに至ったと指摘している。

理事長によると、INESの評価は原子力発電所での安全関連事象について本当に深刻なものと、それより軽いものとの線引きなど、状況に応じ比較することを意図したもの。日本の当局がその評価を繰り返し変更したことは、INESが次に何が起こるか予測するために上下する「原子力脅威レベル」であるかのような印象を与え、逆効果になる。INESは一般大衆に事故時の影響を平易な言葉で説明することと併せてこそ使われるべきだと主張している。

WNAとしてはNRAが国際原子力機関(IAEA)から受け取った助言、すなわち「頻繁な評価の変更は実際の状況を明解に伝達する上で助けにならない」に従うよう強く要請。IAEAが助言の中で、「1つのあり得るコミュニケーション戦略は、INESを一連の同様の事象中の各事象を評価付けするためのコミュニケーション・ツールとして用いるより、むしろ、この種の事象の安全上の重大性を説明する適切なコミュニケーション計画を練り上げることだ」と述べた点に言及した。

リーシング理事長はまた、汚染水漏れが発覚して以降、INES評価について発表する毎に状況が悪化しているのではないかとの新たなメディア報道につながる様相を呈していると指摘。これはINES評価が何度も改訂された福島事故の際と同様、コミュニケーション上の誤りが惨めに繰り返されたということであり、INESのみならず日本政府、原子力産業界全体の信頼性を損なうことになる。

原子力発電利用国とIAEA間の国際取り決めが維持される間、INESは今後も利用され続ける。これはコミュニケーション上の1つの技術的・専門的側面を扱うものであるが、その意義も今や弱まってしまった。優先されるべきは安全関連事象の背景事情やその公衆への影響との関係でなければならないと訴えている。


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