東芝が受注に向け新体制 サウジの導入計画、来年設計選定

東芝は9日、米国の大手電気事業者のエクセロン・ニュークリア・パートナーズ(ENP)社および傘下のウェスチングハウス(WH)社とともに、サウジアラビアに対して原子力発電所の新規建設に向けた共同提案を行うことで合意し、契約を締結したと発表した。

2010年7月にENP社と結んだ共同提案体制にWH社を加えることで、ABWRのほかにAP1000という提案選択肢の可能性を確実とするなど、32年までに16基の原子炉建設を検討するサウジからの受注を目指して盤石な体制を整えている。

今回の契約では、東芝とWH社が機器の設計・技術を担当する一方、全米で1700万kWの原子力発電設備を操業するエクセロン社の子会社であるENP社が原子炉の運転関連サービスを担当。米国の設計認証(DC)を取得済みの上、日本で安全な稼働実績を有する第3世代のABWRと受動的安全系を備えた第3世代プラスのAP1000を共同提案していく。

なお、未確認の報道によると、同日にGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社もENP社と同様の覚書を締結。サウジにGEH社版のABWRと150万kW級のESBWR(高経済性・単純化BWR)を供給する実行可能性について、2社が協力して探っていくと伝えられている。

サウジアラビアは世界第1位の原油輸出国だが、原油は貴重な外貨獲得手段であることから、同国は人口の増加と経済規模の拡大に伴い年率8%で増加する国内エネルギー需要を賄うために、太陽光などの再生可能エネルギーとともに原子力を代替エネルギーとして導入・開発する方針。10年4月にアブドラ国王が法令に照らして設立した研究開発公団「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA―CARE)」を中心に、現在、国営原子力持ち株会社の設立準備を進めている。

今年4月現在の原子力開発戦略・ロードマップによると、同国では32年までに総発電設備の14.6%に当たる約1800万kWを原子力設備とする計画。そのためには今年後半から来年前半にかけて原子炉メーカーの絞り込みを実施するのに続き、14年末までに発注先を決定する。その後、16年以降に投資決定と最初のコンクリート打設を行い、22年にも初号炉で送電を開始する必要があるとしている。また、原子炉の建設による経済効果にも期待しており、建設ピーク時のGDPへの貢献を約1%と試算。雇用も7万人分が創出されると予測している。

諸外国との協力も積極的に推進中で、すでに仏国、アルゼンチン、韓国、中国と二国間原子力協力協定を締結。日本との協力については、日本政府が今年2月、原子力協力分野における覚書締結に向けて協議を開始したことを明らかにした。


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