【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(14) 放射線育種や害虫根絶で農業に貢献

放射線は梨・稲・ダイズなどの新しい品種を生み出すことを手助けしたり、害虫駆除に使われたりしています。ゴーヤも全国で食べられるようになりました。

ゆりちゃん 放射線は農業の分野ではどのように利用されているのですか?

タクさん 自然界では、宇宙からくる放射線などの影響で突然変異が頻繁に起こり、新しい品種のできることがあります。米国のスタッドラーは1928年、植物に放射線(X線)を当てて、突然変異を効率よく起こさせることに成功しました。これを利用して品種改良することを「放射線育種」と言います。自然界と放射線による突然変異自体には違いがありませんので、放射線育種でできた農作物を食べても安全です。

ゆりちゃん 放射線育種の具体的な例を教えてください。

タクさん 青梨系の「20世紀」は、黒斑病と呼ばれる病気に弱かったため、研究者たちは茨城県常陸大宮市にある農林省の放射線育種場を利用して苗木にガンマ線を当て、突然変異を起こさせ、黒斑病に強い「ゴールド20世紀梨」を作り出しました。同じように、稲では米の品質がよく、収穫量が多く、寒さに強いなどの多くの長所を兼ね備えた「アキヒカリ」を作りだしました。また、大豆では、親の品種に比べて種まきから収穫までの期間が25日も短くなり、寒くなる前に十分に実を結ぶ「ライデン」という品種を作り出しました。この他にもスーパーなどで見かける純白のエノキタケ、変わったところでは冬でも青々としたコウライ芝「ウインターフィールド」など、沢山の植物がこの方法で品種改良されました。

ゆりちゃん 放射線育種の他にも放射線利用の例を教えてください。

タクさん 少し古い話だけれど、NHK番組「プロジェクトX〜挑戦者たち:起死回生の突破口/8ミリの悪魔VS特命班/最強の害虫・野菜が危ない」で、ニガウリ(ゴーヤなど)が大好きなウリミバエの撲滅が紹介されました。オスの幼虫やさなぎに適切に放射線を当てると不妊化し、成虫になったときにメスと交尾しても受精卵ができなくなります。不妊化したオスの成虫を害虫の生息域で繰り返し放してやると、メスが野生の健全なオスと交尾する機会が少なくなり、受精卵ができる割合が減っていくので、ついに害虫を根絶することができます。これによりウリミバエの根絶に成功し、これらの島から野菜や果物が島外へ出荷できるようになりました。ゴーヤが全国で食べられるようになったのも、ウリミバエ根絶のお陰です。(原産協会・人材育成部


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで