OECD/NEAが福島事故で新たな報告書 取った対応と得られた教訓

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)は10日、「福島第一原子力発電所事故――NEA加盟国の原子力安全対応と得られた教訓」と題する報告書を公表した。同事故後に原子力発電設備を有するNEA加盟各国、およびNEAの3つの常設委員会が取ったアクションの概要をまとめるとともに、今後、高いレベルの原子力安全を保証していくための主要メッセージとして、安全確保のための対策や原則を実行していく上で現状に甘んじる余地など無いこと、必要な事前対策を立て、試験した後も定期的に見直していかねばならない――などと呼びかけている。

[事故後の加盟国の行動]

報告書はまず、事故後の各国の対応について、それぞれの稼働中原子炉で安全性の確認という初期行動が取られた後、「ストレス・テスト」の名で知られる包括的な安全審査が行われた点に言及。福島第一原発が経験した深刻な外部事象や安全機能の喪失といった事態に特に焦点を合わせて安全裕度が再評価されるとともに、設計ベースの想定の適切さ、および設計外事象に対する備えについても審査が行われたとした。

各国はそれらの結果に応じて既存炉の安全系をアップグレードするとともに自然災害に対する耐性向上を目的とした設備を追加。将来、福島と同様の事故の再発を防ぐアクションを効果的に取る道が模索されつつあると報告書は指摘した。中でも、深層防護の原則の適用を加速することや、事故時の使用済み燃料貯蔵プールにおける挙動について理解を深めること、緊急時の手続きやガイダンス、およびコミュニケーションの見直し、深刻な状況下における緊急時計画の効果を改善することなどに主眼が置かれたと説明している。

[主要メッセージと結論]

このような事故後の諸活動とレベルの高い原子力安全の維持・改善を保証していく意味合いから、報告書は次のような結論と主要メッセージを導き出した。第一に、「原子力を利用するNEA加盟国は原子炉の安全審査を速やかに実行。さらに包括的な審査を行うなかで原子炉の運転を継続しても安全であると断定した」こと。そして、「福島の根本メッセージは安全確保のための活動や原則の実施で気を緩める余地は無い」ということだ。

また、「職業として原子力安全に携わる者には、安全確保活動と原則の適用が効果的に行われるよう互いに義務を負い合う責任がある」と明言。安全確保の一義的責任は事業者にあると認める一方、規制当局は放射線による悪影響から公衆と環境を守る責任を負っていると説明した。

福島事故では敷地外への放射性物質放出を防ぐ工学的バリアがすべて打ち砕かれたが、「深層防護という原則は依然として有効であり、原子力安全を担う者達が共有し続けるべきものだ」と結論付けている。

NEAとしては「事故の発生可能性を完璧に除外出来ない以上、原発サイトの内外において放射線による緊急事態に対応・処理するための対策を事前に立て、試験するとともに、演習による経験上のフィードバックを統合するために、これを定期的に見直していかねばならない」点を重要視。「常に疑問を持ち、学ぼうとする姿勢こそ、レベルの高い安全基準の改善努力を続け、それらを効果的に実行していく上で絶対不可欠なことなのだ」と訴えた。

さらに、「安全確保は一国の責任である一方、事故の影響は広範囲におよぶ可能性があるため地球規模の懸念を引き起こす」と指摘。「福島事故の経験を完璧にフィードバックするには何年もかかるだろう」と予測した上で、国内規制の枠組の中で安全確保への取り組みが効果的に行われていることを保証する良好な慣行を特定する国際協力は重要だとしており、NEAはそのための効果的な協議の場を加盟国に提供していると強調した。


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