超電導コイル高性能化 重粒子線治療装置など 東芝、製造技術を開発 小型化や省エネに期待

東芝は17日、4〜5mm幅のテープ形状のイットリウム(Y)系高温超電導線を、3次元形状に自動で巻線可能な製造技術を開発した(写真は鞍型コイル)。

重粒子線がん治療装置で使用される炭素イオン用加速器の偏向マグネット向けを想定し、世界で初めて全長400mmの鞍型コイルを製作し、設計通り0.1テスラの磁場を発生することを実証した。

MRI等で実用化されている低温超電導機器は、液体ヘリウム温度(マイナス269度C)に冷却して使用する必要があるが、高温超電導技術は、液体窒素温度(マイナス196度C)で利用することができる。Y系高温超電導線は、セラミクス膜で構成されているため、3次元形状のコイルを実規模で製造することが困難だった。

今回、確立した製造技術は、科学技術振興機構の戦略的イノベーション創出推進プログラムのなかで開発した巻線基本技術を応用したもので、テープ形状の高温超電導線を3次元形状に巻線する技術を自動化、実規模のコイルを実現したもの。

この技術により、3次元形状コイルを必要とするマグネットを、Y系高温超電導線で製造できるようになり、超電導機器の小型軽量化および省エネ化が図れる。また、同社は高温超電導コイルを冷却するための冷却技術として、冷凍機を起動した時には急冷が可能で、冷凍機が万一に故障しても一定時間の運用継続が可能となるような周辺技術、機器の開発も進めている。今後は、重粒子線がん治療装置、MRIをはじめとする医療機器、加速器ほか多くの超電導機器に超電導コイルの実用化を進める方針だ。


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