【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(15) 食品照射で発芽抑制や殺虫・殺菌

食品の殺菌などのために世界各国で、放射線の使用が許可されています。ここでは、食品への放射線利用とは何かについて紹介します。

ゆりちゃん 鹿児島県内の内之浦宇宙空間観測所からの「イプシロンロケット試験機、打ち上げ成功」のニュースに興奮していたら、友達が突然、「そういえば2〜3年前になるけれど宇宙飛行士の山崎さんが宇宙ステーションで放射線を当てたスモークターキーを食べていたね」って言い出したのですが、本当のことですか?

タクさん 本当です。宇宙では長期間保存ができないと宇宙食としては使えません。そのため宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙食の1つとして「放射線照射食品」を用意しているのです。放射線照射食品については、内閣府に設置された食品委員会が、2012年6月に作成したファクトシート(科学的知見に基づく概要書)の中で、「農作物の発芽抑制、熟度調整、食品の殺虫・殺菌などを目的として放射線を食品に照射することを食品照射、照射された食品を放射線照射食品または照射食品」と定義しています。

ゆりちゃん 食品に放射線を照射しても安全なのですか?

タクさん 安全です。2006年9月に発足した“食のコミュニケーション円卓会議”では、世界の動きを詳細に調査・分析して、「病院でX線透視(レントゲン検査)を受けてもX線は体の中には残らないように、放射線は食品の中には残りません。食品の栄養成分や品質はほとんど変わらず、有害な物質もできません」と説明しています。

ゆりちゃん どんな食品が実際に照射されているのですか?

タクさん 表で示すように世界で約30の国、地域、約40品目で年間約40万トンの食品照射が行われています。

ゆりちゃん 日本でも照射される食品はあるのですか?

タクさん 国内では唯一、ジャガイモの照射が認められています。北海道の士幌町農業協同組合では1974年の春以来、専用のガンマ線照射施設を用いて発芽抑制(発芽すると栄養が損なわれて、おいしさも失われますし、芽が出たり表皮が緑化したりしたものにはソラニンという有害物質が増えて、食中毒をおこすことがあります)したジャガイモを、3月から5月の端境期(はざかいき)に出荷しています。その量は、年によって異なっていますが、2005年が約8000トン、2007年は約4000トン、2010年では約6000トンと報告されています。ちなみに2007年では、士幌町農協の同年のジャガイモ出荷量約4万2000トンの10%、全国の約240万トンの約0.17%でした。食品照射に興味をもたれた方は、日本原子力産業協会から2007年に発行されダウンロードも可能な「食品照射Q&Aハンドブック」をお読み下さい。

原産協会・人材育成部


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