約20年後に高ケースで倍に IAEAが2050年までの原子力設備予測

国際原子力機関(IAEA)は9月24日、2050年までの世界の原子力発電設備開発について分析・予測した年次報告書の最新版を公表した。福島第一の事故の影響もあり、事故以前の報告書より成長速度は緩やかなものの、アジア地域を中心に2030年頃までは原子力設備が増大し続けるとしており、高ケースでは2倍近くの伸びになるとの予測を示している。

IAEAは例年、低・高の両ケースについて試算しており、低ケースでは現在の市場や技術等の傾向が持続するとともに、原子力関係の法制度や政策および規制上の変化もほとんどないことが前提。ただし、各国の原子力開発目標すべてが計画通り進展するとは想定しておらず、保守的だが妥当なレベルの予測となっている。

一方、高ケースでは現行経済や電力需要の成長率がアジア地域などで特に継続していくと想定したほか、地球温暖化防止に向けて各国の政策が変化していくと仮定した。

その結果、低ケースでは2012年時点の原子力設備容量である3億7300万kWが30年に約17%増の4億3500万kWまで増える見通し。高ケースでは94%増の7億2200万kWに達するなど、世界の原子力発電容量は成長速度こそ鈍化しているものの減少することはないと報告書は結論付けている。短期的には、天然ガスの低価格化といくつかの国で取られた再生可能エネルギー振興政策により、世界の2〜3の地域では原子力設備の成長に影響が及ぶ。また、現在も進行中の経済危機により、原子力のように大規模な初期投資を必要とする電源には、今後も課題が突きつけられる。

しかし、長期的に見れば、途上国における人口と電力需要の増加、地球温暖化防止、エネルギーの供給保証、その他の燃料価格の乱高下といった観点から、原子力はエネルギー・ミックスの中で重要な役割を果たすことが期待されると報告書は指摘。当然、課題はいくつも残っているし、福島第一事故後の政策対応は今なお変化しているが、過去1年間に多くの国で原子力設備の安全審査を完了し、原子力開発に対する立場を一層明確にした。

これらの審査における最終結果として安全系を改良したり、原子炉を閉鎖したケースさえあるが、原子力は安全かつ盤石なエネルギー源として一層の期待が寄せられていることが示されたと報告書は解説している。

なお、地域別予測は次の通り。アジア地域では2012年末の設備容量である8300万kWが低ケースでも30年に1億4700万kWに増加し、高ケースでは2億6800万kWに拡大するなど、既に原子炉を有する中国や韓国に牽引されて最大の伸び率となる。

ロシアを含めた東欧、インドとパキスタンを含む南アジア、および中東などの地域では、12年実績の4800万kWが低ケースで7900万kW、高ケースで1億2400万kWに増加する。

西欧では両ケース間の予測の差が最も大きく、昨年実績の1億1400万kWが低ケースで6800万kWに急落する一方、高ケースでは1億2400万kWに伸びる。

北米大陸でも現行の1億1600万kWが低ケースで1億100万kWとわずかに低下する一方、高ケースでは1億4300万kWまで伸びると予測している。


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