「巨大複合災害」を検証 学術会議 海外アカデミア交え議論

東日本大震災に伴う影響と対策を検証し、将来に向けた政策のあり方を議論する国際会議が9、10日、東京・港区の日本学術会議で行われた(=写真)。海外学術団体との共催で行われた本国際会議では、地震、津波、原子力発電所事故の「巨大複合災害」による農林水産業への影響、住民や労働者の被ばく防護・健康管理、放射能汚染の調査・分析に関する報告を受け、持続可能な地球社会構築に向けて、今後のアカデミアの果たす役割について広く意見交換がなされた。

2日目のセッションでは、福島第一発電所の事故炉廃止措置の現状について、東京電力が説明し、原子力災害からの復旧・復興プロセスにおける国際的協力、知見の共有を中心に議論した。東京電力で廃炉研究開発を担当する鈴木俊一氏は、中長期ロードマップに従って取り組む事故炉廃止措置の現状について報告するとともに、8月に発足した国際廃炉研究開発機構を通じ、特に汚染水問題に鑑み、「予期せぬことが起こることも念頭に置く」としながら、世界の英知を結集し、技術開発を進めていく考えを強調した。

これに対し、フランスの材料工学に関する専門家からは、事故に伴う廃炉の特性として、構造物の変形局所化の可能性、放射能汚染を指摘し、ロボット技術の開発で困難を克服すべきことなどが述べられた。

さらに、20年頃に開始が見込まれる燃料デブリの取り出し後の対応に関する場内からの質問に対し、鈴木氏は、海外からも非常に関心が高いことをあげた上で、廃炉のエンドステートを、今後3年くらいかけて検討していくなどと応えた。

セッションでは結びに、将来のエネルギー政策について、各国からの参加者に尋ねたところ、英国からは、既存原子炉の老朽化に伴い、再生可能エネルギーやガスも拡大するが、原子力は引き続き重要な部分を占めるとして、新設もありうることが述べられた。

一方、米国は、ガスの大量産出により、原子力は、コストの相対的な上昇で、新設されないムードにあるものの、CO排出削減の必要も含め合わせ、原子力の将来は見通せない状況にあることが述べられた。台湾も、老朽化した原子炉の地震影響の懸念とともに、住民らの激しい反対運動で新設が進まぬ現状を訴えるなどした。


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