森林部の挙動を解明 原子力機構が茨城北部 セシウム移動など

日本原子力研究開発機構の研究グループは29日、茨城県北部の褐色森林土の落葉広葉樹林で、2011年5月から2年以上に及ぶ継続した観測で、福島第一原子力発電所事故に由来する放射性セシウムの落葉層から土壌への移動メカニズム、移動量及びそれらの時間変化をはじめて明らかにしたと発表した。

分析の結果、落葉層から土壌に移動する放射性セシウムは、雨水等の浸透水によって土壌深層へ移動するが、移動する放射性セシウムの割合は、土壌に蓄積された量に対し、ごく僅かでかつ経過時間とともに減少傾向にあったことがわかり、今後も10cmより深くまで移動する割合は小さいことが明らかになった。また同研究により放射性セシウムの移動の実態解明、将来予測につながることが期待されるとしている。

福島県山間部の約7割を占める褐色森林土における放射性セシウムの移動実態を明らかにするために、福島県に隣接する茨城県北部の国有林を試験地として、福島第一原発事故後から2年以上にわたり、ライシメーター(土壌中の水収支や水溶性物質の量を測定するための装置)を用いて、土壌浸透水に含まれる放射性セシウムを継続的に観測。ライシメーターによる事故後まもなくからの連続観測は、チェルノブイリ原子力発電所事故等を含めてこれまでになく、この研究ではじめて適用され、放射性セシウムの移動量とその時間変化を解明したもの。

放射性セシウムは地下水を経由して森林地帯から周辺地域には流出しにくいと考えられるが、一方で、土壌表層に蓄積した放射性セシウムが林産物にどのように取り込まれていくのか、注視していく必要があることもわかったという。


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