リテラシー欠如に危惧 リスクコミュニケーション 事故提言踏まえ討論

原子力発電のリスクコミュニケーションに関するパネルディスカッションが15日、都内で開かれた(=写真)。学識経験者らが5月に発表した過酷事故に関する提言を踏まえ議論したもの。

討論に先立ち、原子力学会で事故調査に携わる宮野廣氏(法政大学客員教授)が、提言の内容について説明し、客観的かつ定量的なリスク情報に基づく合理的な安全対策の検討とともに、公衆との対話に際しては、リスクの評価結果、低減目標などを誠実に説明する必要があることを述べた。

鳥井弘之氏(NPO法人テクノ未来塾理事長)の進行によるパネルディスカッションでは、提言の取りまとめにも関わった杉山憲一郎氏(北海道大学名誉教授)が、リテラシーが足りないことから生じるリスクにも触れ、「ある側面だけを見て他を見ないで発言してはいないか」と危惧した。リスクコミュニケーションが専門の木村浩氏(東京大学講師)は、一般公衆へのインタビュー活動などの経験から、「リスクのとらえ方は思った以上に広い」とした上で、「リスク情報をただ伝えればよいのではなく、社会に納得してもらう」ことが必要と述べた。

また、福島発電所事故を契機に取り沙汰されるようになった「想定外」に関して、立地自治体で原子力安全対策に関わっていた来馬克美氏(福井工業大学教授)は、国の定めた基準への対策だけでは、住民には十分理解してもらえないとして、事業者によるさらなる安全向上の努力が求められることを訴えた。

科学技術リテラシーの醸成に関しては、電力勤務経験のある村上朋子氏(日本エネルギー経済研究所研究主幹)が、物事の本質を理解する能力を養う必要など、受け手側の姿勢にも言及した。


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