積立金徴収の停止を指示 米控訴裁、廃棄物基金訴訟で

米コロンビア特別区の連邦巡回控訴裁判所は19日、電気事業者など州の公益事業団体の監督機関を代表する法定公益法人協会(NARUC)による訴えを認め、連邦政府の放射性廃棄物基金(NWF)に対する原子力発電事業者からの積立金徴収を停止するよう米エネルギー省(DOE)に命じる判決を下した。使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物の処分でユッカマウンテン計画に替わる処分候補地が示されない現状では、DOEが「徴収は法的に適正」と評価できないのは明らかであるとの判断に基づくもの。

米国の原子力発電事業者は1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)の下で原子力による販売電力1kWh当たり0.1セントを電気料金に上乗せして需要家から徴収。NWPAに明記された計画に従い、DOEが1998年1月までに使用済み燃料の引き取りを開始するということで契約を結び、ネバダ州ユッカマウンテンにおける深地層処分場建設プログラムのためにNWFへの払い込みを続けてきた。

しかし、オバマ政権は2009年にこの処分場建設計画の打ち切りを決定。基金への払い込み停止を求めるNARUCの同年7月の要請をDOEが拒否したことから、NARUCと米原子力エネルギー協会(NEI)は10年4月に訴訟を起こした。だが、この時は料金徴収継続の正当性を主張するDOEの年次評価書の内容が認められ、産業界側の訴えは却下されている。

今回判決が下された訴訟は、DOEによる徴収料金の適正評価そのものの信憑性について11年3月にNARUCが提訴した案件。この料金は処分プログラムの実施に十分な見積り額に基づいて定められるが、80年代初頭以降に産業界が積み立てた額は利子を含めて約300億ドルにのぼり、年間7億7千万ドルが操業開始に至らない計画のために払い込まれていることになる。

DOEが今年1月にまとめた徴収料金の評価書について裁判所の判事は、必要額の見積り幅が大き過ぎて、分析技術としては全く役に立たないと指摘。「廃棄物をどのように永久処分するかなどDOEが一定の結論に到達するまでは、原告に仮想オプションへの払い込みを強いるのは非常に不公平と考えられる」と結論付けた。その上で、「DOE長官が法的に適切な料金評価が出来ないことは明白であるため、同長官が現在の廃棄物法を遵守する道を選ぶか、議会が廃棄物管理の代替計画を法制化するまでの期間、払込金をゼロに変更する提案を議会に提出するよう同長官に義務付ける」としている。

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米原子力産業界の見解

裁判所の判決についてNARUCは「原子力発電の顧客にとって非常に喜ばしいニュースだ」と評価した。

原子力事業者とその顧客達は80年代初頭から放射性廃棄物処分場建設のために誠実に料金を支払い続けてきたが、そうした投資の結果残っているのはネバダ州に開いた穴だけだとNARUCは指摘。ユッカマウンテンでの処分場計画を巡る政争を終わらせるとともに、連邦政府が打ち切った計画への追加料金も課されるべきではないとしており、今回の裁定で原子力発電の顧客達が政府の不手際に対する料金の払い込みを免れることになったのは有り難いとの見解を表明した。

米原子力エネルギー協会(NEI)も同日、「年間7億5000万ドルの支払いから原子力の顧客を解放する判決だ」と絶賛する声明文を発表した。

裁判所判決により、実行可能な使用済み燃料管理プログラムの実施に向けて議会が明確に示した指示を連邦政府が拒否し続けることはできないことが確認されたと評価。担当機関や大統領が根本的な政策に同意しているか否かに関係なく、連邦政府には法が定めた計画を実行に移す義務があるという基本原則を強化する内容であるとの認識を示した。議会に対しては新たな廃棄物管理組織を起ち上げ、放射性廃棄物政策法が当初定めた目標を達成するのに必要な権限と財源を与えるよう強く要請している。


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