【服部原産協会理事長の所感 年頭にあたり】

新年明けましておめでとうございます。

2014年の年頭にあたり、今年の原産協会の取り組みについて、4点述べたいと思います。

第一は、福島支援活動の継続・発展です。

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故発生から、間もなく3年が経とうとしていますが、今なお多くの方々が、仮設住宅等での不自由な避難生活を余儀なくされています。放射線の影響に対する不安が残る中、除染が当初の計画通り進んでいないものの、避難指示区域の再編が一段落し、中間貯蔵施設の建設に向けた動きにも進展が見られます。また、被災者の線量管理の方針が示されるなど、生活基盤整備に向けた環境が徐々に整ってきていると受け止めています。加えて、国が除染費用や中間貯蔵施設の建設費を負担するなど、前面に出て事故処理を進め、復興への取り組みが加速される体制が整いつつあります。

当協会としては、「福島の復興なくして日本の原子力の将来はない」との言葉をあらためて胸に刻み、引き続き地域の方々に寄り添い、放射線の理解活動等、地域の方の目線に立った活動を継続し、早期の生活再建・復興に少しでも貢献できるよう取り組んでまいります。

第二は、重要電源としての原子力発電に対する理解の促進です。

昨年12月に示された「エネルギー基本計画」の素案において、原子力発電は、「基盤となる重要なベース電源」と位置づけられました。その具体的な歩みの第一歩として、現在進められている「新規制基準」に基づく適合性確認において、安全性が確認されたプラントについては、速やかに再稼働する必要があります。それには、立地地域の方々をはじめ、広く国民の理解と支持が不可欠です。国、事業者は、安全性確認の結果やその取り組みに関して、わかりやすい丁寧な説明を行っていくことで、国民の信頼を積み重ねていくことが重要です。特に、事業者においては、規制要求の範囲にとどまらず、より高い安全性を目指した自主的かつ継続的な取り組みが欠かせません。

当協会としては、国民一人ひとりがエネルギー問題を自らの問題として捉え、原子力発電を「基盤となる重要なベース電源」として、エネルギーミックスの中で適切に位置づける必要があることを理解していただけるよう、多様な情報を発信してまいりたいと考えています。

第三に、国際社会への貢献です。

福島第一原子力発電所の事故があったものの、高品質の機器製造能力や耐震設計技術など日本の原子力技術に対する海外からの信頼は高く、新規建設プロジェクトへの参加など、引き続き大きな期待が寄せられています。その反面、事故に関する情報発信、廃止措置に向けた海外企業との協力体制には、「よりオープンな対応を」との声が絶えません。事故を経験したわが国には、事故の教訓を世界と共有し、世界の原子力発電の安全性向上に役立てることが、国際社会に対する責務であり、また、事故後の処理など世界の経験や知見に学ぶべきことが数多くあるはずです。

当協会では、長年培った海外諸国との協力関係をもとに、海外の声を国内に届けることはもちろん、日本の取り組みや福島第一原子力発電所の状況などについて、よりタイムリーかつわかり易く海外へ発信し、理解促進に貢献していきたいと考えています。

第四に人材育成です。

福島第一原子力発電所の事故以降、日本の原子力発電は先行きが見えず、原子力産業界を志望する学生の減少を心配する声が多く聞かれました。しかし、先に公表された「エネルギー基本計画」の素案に原子力発電の位置づけが明確化されたことや、今後進むであろう再稼働などを受け、原子力産業界への関心が少しずつでも高まってくれることを期待しています。エネルギーの安定供給と地球温暖化対策の観点から、原子力発電が世界の多くの国で利用される見通しであることを考えると、今後長期に亘り、原子力発電所の建設、運転だけでなく、廃止措置、燃料サイクル、廃棄物の処理処分など、多岐にわたる分野に、志ある多様な人材が必要になります。我々原子力産業界で働く者は、グローバルかつ長期的視点に立って、各国が有する経験や叡智を世界で共有し、より安全で広く信頼される原子力発電システムに進化させ、広く世界に普及させていかねばなりません。

当協会では、より安全で信頼性の高い原子力技術の利用に向けて、わが国だけでなく、世界の原子力産業界で活躍できる人材の育成を目指して、多面的な取り組みを進めてまいります。

日本原子力産業協会理事長 服部 拓也


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