海外プラントも視野に 三菱重工、PWR保全技術で実績重ね 米国で初めて適用 WJPでSCC対策

原子力発電所の予防保全技術のひとつで、水をジェット噴射させキャビテーション(気泡)の衝撃圧で残留応力を改善するウォータージェットピーニング(WJP)は、水中で安定した施工が可能な方法。昨年6月に三菱重工はウルフクリーク原子力発電所(カンザス州)とキャラウェイ原子力発電所(ミズーリ州)から原子炉容器に対する工事を相次いで受注した。応力腐食割れ(SCC)は原子力発電所のトラブルにつながる主な原因のひとつで、対策が進んできた技術分野だ。

PWRの予防保全には、原子炉容器上蓋の交換のように、耐SCC性の材料を使った新しい機器に一式交換する方法などが知られている。三菱重工でも国内外のプラントの交換工事などを受注、実績がある。

材料の応力改善をはかる方法も予防保全の有効な技術として開発されてきた。WJPは応力改善の方法のひとつで、水を使って水中で施工するので残留物が少ない、原子炉の周辺にあるような高線量機器でも低い被ばく線量で作業ができる、などの特長がある。

また複雑な形状の機器にも安定した施工を実現する技術改良と施工経験の蓄積がある。たとえば炉内計装筒管台およびその溶接部のような原子炉容器内の狭隘で高線量の場所にある機器の応力改善に適用され、良好な実績を重ねている。

応力改善の方法には、ほかに施工する機器の状態や形状に応じて超音波振動を活用した超音波ショットピーニングや、応力の発生しやすい部位(接合部等)に耐SCC性に優れた材料を肉盛溶接する方法などがあり、同社は適用する機器に対応した保全技術をラインナップしている。

WJP工事は、その特長から適用例が多く、国内21基のPWRプラントに適用。その実績と経験が評価されて今回、海外の原子力発電所を対象に初めてWJPが適用されることになったもの。

同社は、受注した米国の2プラントについて、原子炉容器の出入口管台など一部の異種金属溶接部を対象に経年劣化の1つである応力腐食割れを予防する工事のための準備を進めている。

原子力発電所の経年劣化に対する予防保全対策は世界共通の問題であり、時間を経るごとに高経年プラントが増える現実がある。海外プラントでも、WJP工事を含む予防保全へのニーズが継続的に見込まれる。

今回の受注を機に、同社は蓄積した経験と技術を活かし、国内に加えて海外のプラントでもこうしたニーズに積極的に応えていく方針だ。


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