米規制委スタッフが評価 「廃棄物移送の緊急性は低い」

福島第一原発がマグニチュード9.0の巨大地震とそれに伴う津波の被害を受けて以来、米国の原子力発電所敷地内で冷却プールに保管されている使用済み燃料を早急に乾式貯蔵キャスクに移すべきか否かの問題は、米国の原子力産業界と原子力規制委員会(NRC)にとって重要な懸案事項となっている。

両者はともに、長年にわたって貯蔵プールの安全性について数多くの調査を実施してきたが、最近では福島第一事故からの教訓反映活動の一環でNRCスタッフが2つの評価分析を行った。6日のNRCブリーフィングでは、同スタッフがそれらに基づいて貯蔵プールの安全性、乾式キャスクへの早急な移送による安全性改善など、関連の技術分析情報をNRCの委員達と産業界に提供。貯蔵プールからの移送を早める必要性は小さいとの結論を伝えている。

1つ目の評価は事故直後にNRCスタッフが開始した「マークT型格納容器付きBWRにおける設計基準外地震の貯蔵プールに対する影響分析」。調査の焦点は、大規模だが発生可能性の極端に低い地震により冷却水が漏洩するほどの損傷を受けるか。また、そうしたリスクが貯蔵プールからの早急な移送を理由付けることになるかという点だ。福島第一原発と設計が類似するピーチボトム原発3号機に基づき、東日本大震災より規模の大きい地震を想定して評価した。

昨年6月に完成した報告書のドラフト版でNRCスタッフは、「このタイプの貯蔵プールが漏洩なしで大規模な地震に耐え得る可能性は非常に高い」と評価。地震分析を行ったレファレンス炉で貯蔵プールから放射能が放出される可能性は1千万年に1回かそれ以下だとしており、使用済み燃料プールは公衆の健康と安全を防護できると結論付けた。同調査ではまた、日本の貯蔵プール20か所と米国のプール1か所についても評価を実施。2007年7月以降に複数回の地震を経験しているにも拘わらず、明白な損傷は認められなかったと明言している。

同年11月には、NRCスタッフがこうした結果を全米の原子炉に拡大した規制分析となる「福島事故の教訓に関わる使用済み燃料の早急な移送問題についての評価と勧告」を発行した。貯蔵プールから使用済み燃料を移送することが、追加でかかる経費を正当化できるほど実質的な安全性の強化につながるかを分析調査する内容。結論として、乾式貯蔵キャスクへの移送を早めたところで全体的な公衆の健康や安全性が大幅に改善されたり、追加経費を正当化するに十分な安全上の恩恵が得られるわけではない、と指摘している。


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