【対談特集 Vol.2】「若手世代と考える原子力」幅広い視野から有識者のお話しをうかがう対談企画の第2回目は、「若手世代と考える原子力」をテーマに、課題の多い原子力を担っていく若手世代として原子力を専攻する研究者、学生の皆さんに座談会形式でお話しを伺いました。聞き手は元日経新聞論説委員の鳥井弘之氏です。 〈各氏の問題意識を聞く〉話し手:羽倉 尚人氏 東京都市大学原子力研究所助手 学生の時から日本原子力学会の学生連絡会などで様々な活動に携わる。一般企業を経験して、最近では人材問題など重視し活動。主な研究分野は原子炉物理/核データ評価で、2011年には日本原子力学会論文賞を受賞。 学生のときから、日本原子力学会の学生連絡会などで活動していますが、若手の議論の場などで特に今後考える必要があると思うテーマのひとつに人材確保・育成があります。今、原子力発電所が稼働していない状況ですが、技術を今後も維持していく上で、人材が必要ですから。ひきつける魅力をどうやって伝えていくかが重要と考えています。学会の若手の会(YGN)では、主に35歳以下の原子力関係の人が集まり原産協会の地域ネットワークの協力も得て色々な活動をしていますが、そういうなかで、若手同士で切磋琢磨するような場を設けたりしています。また同じく学会の男女共同参画委員会では、もう少し若年層、中高生に対して、原子力業界に入るとどういう方向性があるのか、また将来のキャリアパスが少しでも見えるような形にするため、ロールモデル集をつくるなどの活動もしています。今後、こうした中高生や学生が希望を持てる、魅力ある原子力産業界にするにはどうしなければいけないか、議論したいと思っています。 話し手:犬飼 健一朗氏 東京都市大学大学院共同原子力専攻修士1年 エネルギーや原子力をめぐる議論のほか、学生との対話企画では産経新聞社賞を受賞。一方、ブレイクダンスなど、歌って踊れる理系男子の一面も。研究テーマは、直接処分における使用済みMOX燃料の保管廃棄容器の設計。 原子力の今後やエネルギー政策について考えたいと思います。日本がここまで発展できたということが、原子力のおかげも必ずあると僕は思っているんです。日本の立ち位置というのを世界的なレベルで考えると、アジア各国が目指すという意味で「日本」という言葉が出てきてほしい。反面、日本が「今回、事故があったから、原子力はもうやめます」と言えば、アジア全体としても、道を塞ぐことにつながる心配もあると僕は思うのです。 以前、教員の免許をとるとき、教育実習のなかで生徒たちに言ったことは、「君たちが葉書に住所を書くとき、東京都から書くだろう、実は、それはもっと大きいことを考えれば、世界の中の、アジアの中の、日本の中の東京都なんだ。そこまで考えて、日本人はやっていかなきゃいけないところにいるんだ」ということです。そう考えるとき、原子力を好き嫌いだけではなく、もっと現実的な、色々なものを日本は背負っていることに考えつく。そうしたところから若い人のなかに、新しい見方が出てくることを期待し活動しています。世界に視野を広げて、原子力をもう少し見直してもらえればと。 話し手:北薗 孝太氏 東京都市大学工学部原子力安全工学科4年 エネルギーや原子力をめぐる討論会の企画や実践を通じ、みなとともに考える機会作りに取組む。スポーツは何でも好き、大学からのひとり暮らしで料理の腕もあげた。大学では、核融合−核分裂ハイブリッド炉ブランケットにおける核特性の研究を行っている。 エネルギー政策に関心があり、今回のテーマに挙げました。日本は、食料自給率は40%程度で危機感を持ち、エネルギー自給率は原子力発電を含めても十数%と主要国では最低水準にもかかわらず関心が高くない気がします。また欧州のように、ロシアからガスのパイプラインを引いたり、フランスから原子力のエネルギーを輸入したりすることはできない状況ですから、エネルギー源というのをもっと、きちんと考えていかないといけないと考えています。 事故を通して思ったことは、なぜ日本人はエネルギー政策というものに鈍感なのかということ。それから上の人たちだけで議論したことに対して、上の人たちだけに責任を押しつけて、でも、その人たちが提案したことについては真っ向から反対し、その反対の仕方も、ちゃんと知識があって、「こういう理由で」という、きちんとした意見を言っているわけでもない場合が多いと思います。ただただ賛成か反対に短絡する面があると思うのです。 欧米でのエネルギー政策をめぐる議論や決め方を見ると、日本の場合は、きちんと上の人たちや周りの人たちと関係を持ってエネルギー政策を真剣に考えていないな、一人よがりになっているなということをすごく感じます。 その点で、僕が課外活動を通して思うのは、エネルギー政策を真剣に考えること、そのためには教育の枠組みの中にきちん整備されていく必要があるということです。比較的先入観のない小学生、中学生のときから、原子力、放射線の問題など、リスクの面だけでなく、工業や医療に有効利用されている面も踏まえ、バランスよく考えていけば、エネルギー政策におけるベストミックスという考え方にもつながっていくものと思います。 聞き手:鳥井弘之氏 元日経新聞論説委員 元東京工業大学教授 ジャーナリストとしての活動経験を踏まえ、科学技術分野の深い経験と見識をもとに意見提言を続ける。また、科学技術に関心ある人材の健全な育成等に取り組むテクノ未来塾理事長として若者との対話も積極的に進めている。主著に「科学技術文明再生論」、「原子力の未来」など お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |