フィンランドとロシアが新協定 損害賠償問題をクリアフィンランドとロシアの両政府は25日、原子力平和利用分野における新たな二国間協力協定に調印した。2004年に原子力部門の協力協定が満了して以降、両国は法的枠組となる協定なしで原子力協力を行ってきたが、昨年、フィンランドのフェンノボイマ社がピュハヨキに建設するハンヒキビ原子力発電所1号機にロシア製原子炉の採用を決めたことから、原子力損害賠償に関する事項の解決も含めて新たな協定を締結する必要性が生じたもの。 新協定への調印はフィンランドの首都ヘルシンキで、同国雇用経済省(TEM)のJ.バパーブオリ大臣とロシアの原子力総合企業ロスアトム社のS.キリエンコ総裁が実施(=写真)。ロスアトム社傘下のルスアトム・オーバーシーズ社やフェンノボイマ社に加えて、国内で原発を操業する2事業者も同席した。協力分野として特定されたのは、原子力研究、原子炉、原子力によるエネルギー生産、原子力安全、放射線防護、環境保全などとなっている。 調印に至るまでの交渉で特に焦点となったのは、原子力損害賠償に関する項目。フィンランドは現在、原子力賠償に関する国際的な枠組としてパリ条約に加盟する一方、ロシアはウィーン条約に加盟しており、国境を接する両国間の越境損害についてはどちらの条約も効力を持ち得なかった。TEMの説明によると、新協定では両条約を結び付けるジョイント・プロトコルによってこうした課題がクリアされ、事故を起こした方の加盟条約に従って賠償処理が実施されるとしている。 今回の協定締結についてロスアトム社は、「フィンランドにとって安全で環境にも優しい電源をもたらすだけでなく、同国国内産業の輸出競争力を強化し、北部地方をさらに発展させる前提条件の創出につながる」との考えを強調。ハンヒキビに輸出する原子炉に関しては、120万kW級ロシア型PWR(VVER)のAES−2006設計を予定しているとした上で、福島第一原発事故後の安全要件をすべて満たした盤石な設計になると自信を覗かせた。 TEMのバパーブオリ大臣も、フィンランドでロシア製のロビーサ原発が30年以上、大きな事故も無く安全に稼働している点に言及。安全面におけるロシアの努力により、ハンヒキビでの共同プロジェクトは必ず成功すると期待を表明した。 フィンランドのボイマ・オサケイティエ・グループは2月28日、同社によるフェンノボイマ社への出資比率の50.2%に相当する44社がピュハヨキにおけるハンヒキビ原発1号機建設プロジェクトに参加する最終決定を下したと発表した。 フェンノボイマ社株の34%はハンヒキビ計画で原子炉供給契約を獲得したロシアのロスアトム社が昨年12月に購入を約束していることから、ボイマ・グループは自らの出資比率を残りの66%まで可能な限り上げるために、新たな出資者となり得る企業との交渉を6月末まで継続する方針。その頃には参加企業の最終的な出資比率も明らかにする予定だが、ロスアトム社との株取引については今月中旬に開催する株主総会で承認されることになっている。 フェンノボイマ社に出資するボイマ・オサケイティエ・グループは60の電力多消費産業企業で構成されるが、同プロジェクトへの出資参加については昨年11月、所属企業の4分の1に当たる15社が断念する意向を表明していた。 お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |