気候学者の書簡に賛同声明 「原子力は温暖化防止に貢献」

昨年11月、国際的に著名な気候科学者であるK.カルデイラ、K.エマニュエル、J.ハンセン、T.ウィグリーの4博士が、地球温暖化を食い止める現実的な手段として一層安全な原子力発電システムの開発を推進するよう世界の環境問題専門家に呼びかける書簡を公表した。これまで原子力に反対する立場を取ってきた彼らは、現在の原発について「完璧にはほど遠い」としながらも、受動的安全系など技術の進展は新たな設計を一層安全にし、近代的な原子力技術で廃棄物の処分問題を解決、核拡散のリスクを減じることが可能だと指摘。経済成長に必要なエネルギーの需要が急増する状況下では、原子力を含めずに気候を安定化する確実な道は無いと訴えている。

今年の1月に入り、こうした見解に賛同する声明「気候変動への対応における原子力の役割」を連名で表明したのが、米国の原子力関連学部を有する大学や関連機関、企業等で活躍する4名の重鎮達(=上部の表)だ。彼らは太陽光や風力発電の間欠性を課題として指摘する一方、原子力については「大規模でも費用がそれほど増加しないクリーンで安全な電力を供給し、その他のクリーン・エネルギーとの組み合わせで持続可能な方法で世界の需要を満たせる」と明言。その論拠として、安全性やコスト、廃棄物管理、拡散リスク、CO放出分析などの1つ、1つについて次のように検証している。

〈安全性〉

現在、米国で電力需要の約20%を、16か国が25%以上を原子力で賄うなど、60年前に世界初の商業炉が建設されて以来、民間原子炉の運転経験は1万4500累積年以上にのぼった。

この間に3度の重大事故が発生。一般市民の生命が直ちに失われる事態は生じなかったが、唯一チェルノブイリ事故で放射線被ばくにより作業員28名が死亡した。こうした事故が及ぼすもう1つの健康影響があるとすれば、一般人のガンによる死亡率が、検知できないほどわずかに通常のレベルより高まること。

こうしたわずかな影響は天然ガスに起因する事故や石炭プラントによる大気汚染を原因とする健康影響など、その他の発電技術による多数の死亡件数と比較されるべきだ。

また、米国原発の運転実績は1979年のTMI事故以降、その教訓を活かして着実に改善されており、ますます厳しくなる安全基準を満たすために日々進化中。現在も日本が経験したような極端な自然災害にも対処可能とするために機能が追加されつつある。

〈コスト〉

原発の建設費が高いことは知られているが、燃料コストにはそれほど左右されないため、化石燃料より電力コストが長期的に予測可能で変動しないという強みがある。米国のガス価格が極端に安い地域では最近、原子炉2基が閉鎖されたが、原発の平均的発電コストは2.4セント/kWhで、全体的に見ればほとんどの場合、ガス価格が驚くほど安くなる時期でも競争力を維持。昨年、先進的な設計を採用して着工したボーグルとサマーの原子炉は、高額な資本費用にも拘わらず長期的な発電コストは8.4セント/kWhであり、天然ガス価格の9.5ドル/MMBtuに太刀打ち出来る。

また、天然ガスの価格は非常に変動し易く、原子力発電の重要ポイントはこうした化石燃料の価格の脆弱性に対応できること。多額の補助金を受けている太陽光や風力と比較しても大幅に安く、毎日利用できるとは限らないこれらを凌いで、電力供給に大きく貢献できるはずだ。(次号に続く


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