【原子力ワンポイント】 広く利用されている放射線(26) 福島被ばく線量低いと国連科学委報告原子放射線の影響に関する国連科学委員会は昨年10月の第68回国連総会で、東京電力福島第一原子力発電所事故影響の中間報告を行いました。最終報告書は4月公表とされています。 ゆりちゃん 「原子放射線の影響に関する国連科学委員」ってどのような委員会なのですか。 タクさん この委員会は、大気圏核実験による放射線被ばくへの懸念が増大したことを受けて、1995年の第10回国連総会決議に基づき、原子放射線が人体と環境に及ぼす影響を明らかにすることを目的として設置されました。最初は、核実験による放射性降下物(フォールアウト)の影響評価が主でしたが、時代とともに核燃料サイクル、自然放射線、医療被曝なども調査対象になりました。同委員会の報告書は純粋に科学的所見からまとめられています。それ故、図1に示すように放射線防護規制作成上の重要な基礎資料となっているのです。 ゆりちゃん 国連科学委員会は福島事故の放射線影響をどのように見ているのですか。 タクさん これは非常に大事な質問なので、間違いのないよう、第68回国連総会に提出された中間報告書の記載内容を引用して紹介します。公衆の被ばく影響について最も注目すべき部分は中間報告書の(39項)と(40項)です。すなわち中間報告書の39項では、「一般公衆への被ばく線量は、最初の1年目の被ばく線量でも生涯被ばく線量の推計値でも、一般的に低い、もしくは非常に低い。被ばくした一般公衆やその子孫について、放射線による健康影響の発症を識別し得る増加は予期できない」、また40項では、「福島県の成人について、国連科学委員会は、生涯の平均の実効線量は10mSv以下であり、最初の1年目の被ばく線量はその半分か3分の1であると推定する。リスクモデルによる推定はがんリスクの増加を示唆するが、放射線誘発性のがんは、現時点では、他のがんと区別がつかない。ゆえに、この集団における、福島事故による放射線被ばくのせいである“がん発症率の識別し得る増加”は予期されない」、と述べています。 一方、朝日新聞(10月12日)は、「作業員被ばく過少推計か、内部被ばく2割多い可能性」と報道しています。中間報告書の36項では、「特にI‐133など、短半減期のヨウ素の放射性核種の摂取による寄与の可能性が考慮されておらず、その結果、内部被ばくとして評価された線量は約20%過少評価されている可能性がある」と述べています。 このように、昨年10月に発表された中間報告書では、未だ、予測に基づく評価段階との印象がぬぐえません。この報告書はその後、修正が加えられ、4月初めに公表されると聞いています。最終報告書が公表されたら、慎重に、中間報告書と内容の相互比較を行い、今後に向けた課題の検討が必要になるでしょう。 (原産協会・人材育成部) お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで |