「着実な実現を」 日本原子力産業協会 理事長 服部 拓也

エネルギー基本計画の決定はゴールではなく、あくまでスタートラインに着いたところと理解すべきである。本計画に対する広く国民の理解が深まり、その支持の下で着実に進められることを期待したい。

1.現実的な政策として評価

  〈略〉

2.原子力の役割を明確に位置づけたことを評価

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3.再稼働に向けた着実な取り組みを

原子力発電所の再稼働については、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」としており、国の積極的な姿勢を明記したことは評価したい。今後早い時期に、具体的にどのように進めるのか、立地地域をはじめ広く国民の皆さまに示すことが求められている。

現在、前提となる新規制基準への適合審査が進められているものの、審査スケジュールの先行きが見通せない状況にある。優先順位づけをするなどの工夫もなされているが、規制委員会、事業者が意思の疎通を図り、効率的に審査を進めていただきたい。併せて、立地地域にとって最大の関心事の1つである避難防災計画の策定について、規制委員会による支援など国を挙げた丁寧な対応をお願いしたい。

また、事業者にあっては、安全神話と決別し、リスクと正面から向き合い、リスクコミュニケーションへの取り組みを強化するなど、失われた信頼の再構築に向けたさらなる努力を期待したい。

4.使用済燃料対策への取り組み強化が必要

具体的な進展が見られないことから、原子力に対する不信感の一因ともなっている「高レベル放射性廃棄物の処分問題」についても、「使用済燃料の貯蔵能力の拡大」と併せて国の取り組みを強化する旨が明記された。放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発を含め、使用済燃料問題の解決に向けた国による総合的な取り組みが示されたことは、中長期的なエネルギー政策の根幹を担う役割を与えられた原子力を着実に進めるためにも評価できる。

これまでの経緯等を考慮し、引き続き推進することとした核燃料サイクルを含めた原子力政策の全体像について、関係自治体をはじめとする国民の皆さまに丁寧に説明し、理解を得る必要がある。さらに、プルトニウムの取り扱いなど、国際社会の理解を得ながら進めるためにも、情報公開を徹底し、透明性を確保しながら取り組むことが重要である。

5.エネルギーミックスの早急な策定を

今回の計画では、具体的なエネルギー構成比については、今後、原子力プラントの再稼働、再生可能エネルギーの導入や環境問題に関する議論の状況等を見極めるとして明示されなかった。そうした中、「エネルギー安全保障に寄与できる電源」と位置づけられた再生可能エネルギーについては、今後3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進するとしている。こうした取り組みにより、これまでに示した水準を上回る導入を目指し、エネルギーミックスの検討にあたってはこれを踏まえることが明記された。こうした目標が示されたことは、今後の研究開発、コスト低減に向けた大きな推進力になるものと期待される。

エネルギー構成比は、エネルギー安全保障、世界的な環境・資源問題の解決にもつながる重要な要素であり、今後の研究開発のあり方、ひいては原子力プラントの新増設の必要性など多岐にわたる指針となることから、できる限り速やかに示していただきたい。

6.本計画をベースに国民的な議論を

本計画を現実のものとし、資源小国である我が国が、将来にわたってエネルギーの安定的な利用を継続するためには、国民1人ひとりがエネルギー安全保障、コストや環境問題に関心を持ち、自らのこととして考え、責任ある選択、行動をとる成熟した日本社会を目指さなければならない。国際社会を見据えた日本のこうした取り組みが、世界共通の環境・資源問題の解決に大きな貢献をすることにもつながる。

そのためにも、政府自らが先頭に立ち、決定プロセス等を含めた本計画の考え方について、広く国民にわかり易く説明し、国民的議論を深めていただきたい。産業界としても、エネルギー関連データ等の情報提供を積極的に行うことで透明性を確保し、広く国民の皆さまから理解され、信頼をいただけるよう努力していきたい。

(本メッセージの全文は原産協会ホームページ〈http://www.jaif.or.jp/〉に掲載)


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