テメリン計画をキャンセル チェコ電力:「政府支援なしでは無理」

テメリン3、4号機増設計画を進めていたチェコ電力(CEZ)は10日、投資資金回収の目処が不透明になったとして同計画をキャンセルすると発表した。前日の閣議で、政府が完成原発からの電力を固定価格で買い取る保証を与えることはできないと明言したことによるもので、入札に参加していた3企業連合にはすでに通知書を送付。しかし、今後20年以内に電力需給が逼迫していくとの見通しがあることから、さらなる原子力開発については政府が年末までに包括的な計画を提示するとしている。

CEZは既存のテメリン原子力発電所サイトに2基増設するため、2009年8月に公開入札を開始。これに対して、(1)東芝傘下のウェスチングハウス社、および同社とチェコ企業の合弁企業(2)ロシアのアトムストロイエクスポルト社とギドロプレス社、およびチェコ・スコダ社の企業連合(3)仏アレバ社――が応札していた。当時は電力市場価格およびその他のファクターにおいても同計画には十分な経済的実現可能性があったとCEZは強調。しかし、欧州の電力部門はその後、激しく変貌しており、今や自由市場での売電収入に依存する発電設備への投資すべてが危機にさらされていると説明した。

また、英国政府が固定価格での電力買い取り制度導入を決めたヒンクリーポイントC建設計画の投資契約について、欧州委員会(EC)は現在、EC条約の国家補助規則に抵触するかの点で諮問協議を実施中。同制度に批判的なECとEU域内の電力部門に関する協議が今後も続くことを考慮し、チェコ政府は現時点で低炭素電源建設に対する政府保証や価格の安定化メカニズムを提示する計画はないとした。こうした背景からCEZは買い取り価格保証などの政府支援なしで原子炉を建設することは難しいと判断。増設計画の中止を決めたと見られている。

ただし、CEZのD.ベネシュCEOは「これでチェコ国内での原発建設を停止するという意味ではない」と強調。今後20年以内に国内の電力需要をカバー仕切れなくなるというリスクは依然として深刻であり、将来的に更なる原発開発を保証していくために政府と緊密に協力していく必要があるとしている。


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