「原子力の価値、見誤るな」 米NEI 電力市場を展望

米国原子力エネルギー協会(NEI)は民生用原子力の利用促進に資する様々な活動を展開する非政府組織だが、このほど証券アナリスト向けに行った発表の中では、国内原発の置かれている現状を把握した上で、2014年の米国電力市場の展望について次のように分析した。

M.ファーテル理事長兼CEOはまず、国内原子力発電所の価値が過小評価されて時期尚早な閉鎖が続く一方で、再生可能エネルギーに対し助成金等過度な優遇措置がとられた結果供給過剰となるなど、電力市場に不均衡が生じていると警告を発した。NEIでは、問題を抱えた市場の状態を改善できるよう規制当局に働きかけていくとの考えを述べた。

原子力発電所に関しては一貫して高い安全性および信頼度を保ってきた上、福島事故対応として原子力産業界はFLEX(多様性かつ融通性を有する影響緩和策)措置を講じ安全裕度を増していると強調。FLEXは、プラントの設計基準を超えた想定外の極度なシナリオを緩和するためポンプや発電機などの設備を増加する措置で、重要な安全機能を維持することに注力するもの。原子力発電所ごとに柔軟な対策がとられており、各発電所に冷却水注入やバックアップ用ポータブル安全機器を備えるほか、国内原子力発電所での電力または冷却水の喪失状況が管理でき、24時間以内に米国内のどの原子力発電所へも非常設備を配送できる地域対応センターを米国南東部のテネシー州メンフィスと、西部のアリゾナ州フェニックスの2か所に設けるとしている。

2013年の米国内原子力発電所の平均設備利用率は、6月に閉鎖したサンオノフレ2、3号機と稼働率2%だったフォートカルホーン発電所を含んでも90%以上を保持。しかし良好な運転実績にもかかわらず、キウォーニ発電所やバーモントヤンキー発電所など経済的理由のみによって前倒しで閉鎖決定する原子力発電所が増えている。特に自由化の進んだ「マーチャント」電力市場では、需要が下降傾向にある市場条件に対して、古く小さな原子力発電所の立場が弱くなっている。

原子力は2013年に約7890億kWhを発電(2012年から2.6%増加)。特に2013年1月の極寒期中には戦略的価値を発揮し、設備改良の投資が増大している時期でさえ好業績を達成し続けた。

2012年の原子力発電資本支出は圧力容器上蓋や蒸気発生器の交換、大幅な出力増強などで合計85億ドルに上ったが、こうした設備投資は運転年数の経過にともない償却されていくことに留意すべきであり、供給を多様化し配電網を安定させるために重要な役割を果たす原子力発電の価値を見誤らないよう理解を求めた。

米国ではジョージア、サウスカロライナ、テネシーの3州で合計5基が建設中であり、300億ドル規模の原子炉建設計画全体のほぼ半ばにきている。また小型モジュール炉(SMR)時代の到来も近いとして、原子力の将来に期待を寄せた。


お問い合わせは、政策・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで